(前略)
C しかし、心配なのは新規参入銀行だけではない。既存の伝統的金融機関の中にも経営が悪化しているところは少なくない。だからこそ、金融機能強化法の公的資金注入という話になるのだが、同法はなかなか機能していない。問題は棚上げされたままだ。
A そうだね。なかでも信用組合問題はどうなるのか。放置したままとはいかないだろう。
B 昨年度末にかけて、信用組合業界では、経営悪化した組合に対する経営支援の資本注入を、業界が設置した支援制度に基づいて実施するという話になっていた。しかし、いまだに実施されていない。
C 例えば、その対象の1つとして報じられた「山梨県民信用組合」の場合、過去2度にわたって公的資金が注入されたが、相変わらず経営状況は厳しい。
A 金融危機の最終局面で、金融庁は信金・信組の合併を促して、公的資金を注入したが、そのときに重要なミスを犯してしまった。不良債権処理を実質的に棚上げするのを黙認したことだ。そこに政治圧力が存在した点は同情に値するが、しかし、問題処理を怠ったことに違いはない。結局、いまだに問題を引きずるという結果を招いてしまった。
B 金融庁は金融審議会で、信金・信組の統合議論を進めてきた。これは、業界内で問題を処理する能力がなくなった信組業界にメスを入れるということだが、見方をかえると、まだ業界内で問題を処理する能力がある信金に問題をおっかぶせるということでもある。果たしてそんなことができるのか。怪しいものだね。
C 問題信組への支援は、金融機能強化法に基づく公的資金を業界の上部団体が受け入れて、それを原資として個別信組に注入するという仕組みだ。しかも「公的資金注入には一定の経営責任が伴う」という旧金融機能強化法に基づく公的資金注入となる。だからハードルは高いといわざるを得ない。
A それより、支援制度で資本を強化しても、それで問題が解決するのかという疑問がある。たとえば、山梨県の場合、6信組が統合して山梨県民信用組合となったが、県内には「山梨中央銀行」というガリバー地銀が君臨し、信金ですら自分たちの領域を守るのに悪戦苦闘している。信組が生き残るだけの経済基盤と成長性が、山梨経済にあるのだろうか。
B そうだね。同様の問題は九州や北関東などにもいえることだ。公的資金注入や業界による支援制度は結局、経営破綻回避策というレベルにとどまって、将来に向けた活路を開くというような話にはつながらないのが実情だ。この点を無視することはできない。
C 地銀、第二地銀も不動産関連融資などが焦げ付いて厳しい状況にある。だから、地域内で地銀が中核となって問題処理するというシナリオはなかなか描けない。地銀も「自分のことで精一杯」という感じだ。結局、問題処理の先送りを続けるしかないということになりかねない。(後略)