民主党の代表選に出た岡田克也氏は「次の総選挙の争点は議員の世襲問題と企業の政治献金」と言い、代表に選ばれた鳩山由起夫氏は「年金や消費税で自民党を攻め立てる」と言う。しかし第一党になるかも知れない政党の代表に立候補しておいて「愛とか癒し」のようなスローガンしか出せない政治家たちを見ていると情けない。というより、いっそ政治に背を向けて、無関心・無関係を装った方がスッキリするのではないかとさえ思えてくる。
自民党は相変わらず景気対策という名の選挙対策用バラマキ作戦に血道をあげている。GDPの1.68倍の国債を発行してギネス記録更新中。しかも、政府がこれまで財政再建目標として掲げていた「2011年度までにプライマリーバランスの黒字化」は、11年度はおろか、しばらくは無理だから別な指標を見つけなくてはならないという有力議員まで出てくる始末である。
「二大政党で政策を争うために小選挙区制を!」と宣ったのはかの小沢一郎氏であった。その小沢氏も自らが提案して実現した政党助成金だけでは足りなかったのか、田中角栄直伝の建設利権の掌握に勤しみ、東北地方のドン(利権亡者)となり果てた姿をさらけ出した。あと一歩で総理大臣という時に代表辞任でもたつき、民主党の人気はすっかり失せてしまった。鳩山代表では「世襲問題」「四代続く家系としての首相」批判にさらされ、自民党が総選挙の直前に世襲議員ではない知名度の高い党首を出してくれば自滅するだろう。
ということで今回の総選挙も、前回の郵政選挙と同じくらい不毛の国政選挙となり、日本はさらに長いトンネルに潜ることになる。
しかし、よく考えてみれば分かるように、日本には抜本的な方向転換をしなくてはならないことが山積している。このまま漂流しているわけにはいかないのだ。以下、政策課題をざっと挙げてみる。
1、行きすぎた中央集権の問題。その制度疲労は限界まで来ているし、地方にはいくらカネを送り込んでも麻薬くらいの効き目しかない。自立なきところには自治がないのは当たり前だ。各政党ともマニフェストでは道州制を謳っているが、具体的に徴税制度や国との仕事の割り振りまで踏み込んだ提案をしているところはない。自治体も道州制には総論賛成であるが、実際、47の知事が11に減るという段になって反対に回るのは目に見えている。国民も、「経済的に自立しろ!」と言われた途端に反対に回るだろう。しかし、今の浪費型経済運営を続けるには、世界から富を呼び込まなければならない。それができなければ、国民の富を略奪しなければならない。日本の統治機構をどうするのか、これが争点の第1である。
2、教育の抜本策。世界のどこに出しても活躍できる人材が圧倒的に不足しており、このままでは競争社会の中で敗北していくことが見えている。教育をどうするのか、文科省に任せておいても抜本策は出てこない。フリーターや落ちこぼれ、登校拒否者などをいくら減らしても、世界で活躍できる人材は生まれてこない。教育に関しても政策論争が生まれてこなくてはいけない。
3、都市の再生。過去の経済政策は「均衡ある国土の発展」であった。しかし世界第2の経済大国になっても日本の大都市は戦後の焼け跡の中から自然発生的に復興してきたに過ぎない。首都・東京でさえも大地震があれば甚大な被害が予想されているし、広範な液状化が都市機能を長期にわたって麻痺させることが分かっている。都市をいかに安全で快適なものに生まれ変わらせるのか、その過程でいかに国民の持つ貯蓄を積極的な公共投資に仕向けるのか、政治がビジョンを示さなくてはいけない。(後略)