記事(一部抜粋):2009年5月掲載

経 済

【企業研究】サッポロHD

サントリーに呑み込まれる日

(前略) 話をサッポロに戻そう。3月27日の株主総会で、スティールは取締役の選任と買収防衛策の継続に反対を表明した。だが、会社側のすべての議案が認められ、スティール側の提案は退けられた。出席者は875人で、昨年の843人をやや上回った。株主総会に要した時間は約2時間。これまでが嘘のような「シャンシャン総会」となった。しかも、スティール関係者は出席しなかったという。
 昨年の総会では、ウオーレン・リヒテンシュタイン代表が報道各社にリリースを配付、サッポロ経営陣を強く非難していた。
《我々は、2007年11月8日の詳細かつ包括的な「企業価値向上へのアプローチ」を含め、この3年間、何度も、経営改善に関する提言についてお話し申し上げております。(略)経営陣の皆様は、相変わらず、緊急事態であるとの意識に欠け、重要な経営目標を達成することすらできません》
 なぜ今年の株主総会では音なしの構えだったのか。一つに、「サッポロの業績がよくなり、文句をつけられなかったからではないか」(食品会社幹部)という見方がある。
 サッポロは08年、ビール系飲料のシェアでサントリーに抜かれ業界4位に転落した。マスコミでも大きく取り上げられたが、実は業績はさほど悪くなかった。08年12月期は、連結売上高こそ7.7%減の4145億円だったものの、営業利益は18.8%増の145億円。税引き後利益も76億円と38.7%の増益だった。
 リヒテンシュタイン氏は《経営陣の皆様は(略)重要な経営目標を達成することすらできません》と非難しているが、サッポロは2期連続の増益を達成したのだ。
 だからスティールが、企業価値の向上のために過剰なビール生産能力の削減、不動産物件の収益改善、飲料事業・食品事業の売却などを求めても、サッポロが受け入れないのも当然といえる。
 だが問題は、他のビール会社、(キリンHD、サントリー、アサヒビール)と比べると、サッポロの営業利益、税引き後利益があまりにも小額なことだ。例えば前期連結でキリンの営業利益は1459億円、税引き後利益は801億円だから、サッポロのそれは10分の1でしかない。
 他の3社は、少子高齢化や若者のアルコール離れを背景に、積極的なM&Aを展開して業容拡大に努めているが、サッポロにはそのための資金的余裕がない。
 しかも、2期連続の増益とはいえ、08年12月期の1株利益は19.5円でしかない。現在、東証1部銘柄のPERは、業績悪化のために異常な高倍率にあるが、よほど成長性のある企業でなければ20倍以下というのが常識だ。そうすると、サッポロの株価はよくても400円以下が適正となる。
 しかしその「適正価格」は、スティールの平均買いコストを下回る。サッポロがいくら増益だと胸を張っても、スティールとしては、1株利益をさらに引き上げてもらわねば、売り逃げられない。しかも、大量に保有しているため、スティールが売却に走れば、必然的に株価を下落させてしまう。
 さらに、サッポロにとっても、スティールにとっても悩ましいのは、サッポロの今09年12月期が、売上高こそ前期比1.5%の微減ながら、営業利益は18.3%減、税引き後利益は60.7%と大幅な減益が予想されていることだ。予想1株利益は7.7円で7円配当をするのがやっと。株価も大幅下落の可能性が濃厚だ。
 となれば、スティールの「企業価値向上」のための要求がエスカレートするのは必至であり、対立も激化する。不採算部門を売却しろと言うだけでなく、恵比寿ガーデンプレイスなど、黒字の不動産部門の売却要求も高まろう。(後略)

 

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