記事(一部抜粋):2009年5月掲載

経 済

「信金中金」と「傘下信金」

公的資金めぐって軋轢【業界最新地図】

 公的資金の注入を巡って信用金庫業界が揺れている。中小企業等への貸出を伸ばすために金融機関に予防的に公的資金を注入する「改正金融機能強化法」では、業界の中央機関である「信金中央金庫」経由で、傘下信用金庫へ公的資金を注入することが可能となっている。
 赤字に陥るなど厳しい経営環境を踏まえ、大半の信用金庫は、信金中央金庫を経由した公的資金の受け入れに前向きと伝えられる。
「苦況に喘ぐ中小企業を支援するためには、公的資金を受けてでも融資を伸ばすのが早道」(有力信金幹部)というわけだが、肝心の信金中金が公的資金の申請に二の足を踏んでおり、事態は遅々として進んでいない。
 その不満の矛先は、公的資金の申請を決断しない中平幸典・信金中央金庫理事長に向かっている。「自らの保身のためには、業界が危機に瀕してもかまわないということか」(信金関係者)と公然と批判する声が聞かれる始末だ。
 その不満に油を注いだのが、信金中金の資本増強だ。信金中金は昨年9月、2269億円の劣後ローンを借り入れたうえに、今年6月末までに約2000億円の社債型優先出資証券を発行する。いずれも引き受け先は傘下信金。「業界内で資本を調達しておきながら、業界が要望する公的資金は受けないというのでは身勝手すぎる」(信金関係者)というわけだ。
 信金中金は09年3月期決算で連結最終損益が1840億円の赤字に転落する見通しだ。創立以来初めての赤字決算である。
「中平理事長は体調が思わしくなく、ただでさえ退任が取り沙汰されている。公的資金を受ければ、引責辞任と受け取られかねない。それを気にしている」(信金関係者)ともいわれる。
 信金の中には4月から金融庁による貸し渋り検査を受けているところもあり、信金を巡る公的資金論議はすでに時間との戦いになっている。
 信金中金と加盟信金の関係がぎくしゃくするのは今に始まったことではない。両者に距離が生じたのは、理事長に旧大蔵省から天下りを受けてからというのが業界の一般的な見方だ。
「旧大蔵省銀行局の幹部数人が集まって、信金業界への天下りポストを割り振ってきた」
 ある信金関係者はこう舞台裏を明かす。その中心人物は、中平理事長の前任で、初代理事長に就いた宮本保孝氏だったという。
 旧大蔵省の銀行局長、理財局長を歴任、「銀狸」の愛称で民間金融機関に親しまれた宮本氏が、信金中金の初代理事長に就任したのは1993年。まさにバブル崩壊が始まろうとしていた時期だった。(後略)

 

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