記事(一部抜粋):2009年5月掲載

政 治

「場当たり麻生政権」に告ぐ、

早期解散、政界再編を準備せよ【永田町25時】

 麻生太郎がまたも衆院解散を先延ばししようとしている。明確な政権維持の戦略があるなら、それもよい。だが、風任せ、思慮欠如、優柔不断からなら先行きは危うい。
 確かに、小沢一郎の西松建設事件で、自民党と麻生内閣の支持率は上昇し、小沢民主党の風向きは悪い。そこへ真水一5兆円規模の大盤振る舞い補正予算案を提出する。経済低迷の長期化を恐れる国民の期待感は膨らみつつある。定額給付金が国民の手元に届くゴールデンウイーク以降から夏まで、じっと待てば30%台に乗った支持率がさらに上がる可能性はある。
 だが、たとえ支持率が上がったとしても、参院で否決された法案を衆院で再決議して成立させられる現状の3分の2の議席の維持は到底無理だ。仮に自民、公明の連立与党で過半数を維持しても、その程度なら政権はすぐに行き詰まる。安倍政権で衆参逆転劇が起きて以来の不安定政治が続く。せっかく民主党が躓いてくれたのだから、ここは大戦略を立てる好機。つまり政界再編。そこに気づく必要がある。
 解散総選挙は補正予算案とその関連法案が成立した後にと、麻生と菅義偉ら周辺は考える。予算案と関連法案が衆院を通過するのは5月初めから中旬。民主党など野党は反対なので参院での審議は難航必至。民主党が審議引き延ばし戦術をとれば、予算案は衆院通過から30日後、関連法案は60日後に決議したとみなして衆院で再議決、3分の2以上の賛成で成立する。つまり解散は7月上旬、選挙は同月下旬から8月上旬だ。
 そのころには、逮捕された小沢の第一秘書の公判が開かれ、小沢金権政治の悪質さが暴露されているだろう。麻生は念願のサミットに出席して得意満面かもしれない。4月に旗揚げした電通顧問の成田豊、前検事総長の但木敬一、読売会長の渡辺恒雄、フジテレビ会長の日枝久ら各界の著名人を集めた「安心社会実現会議」も答申を出す。支持率は上がり、選挙に勝てるという計算だ。
 だが、そこには日本の政治を安定させようという大戦略がない。計算通りにいくかどうかさえ危ういものだ。解散が近づいた時点で小沢が民主党代表を辞任して岡田克也が後継となるのはほぼ確実。岡田民主の人気によってはぎりぎり過半数か与野党伯仲。場合によっては民主党が過半数もあり得る。国民の多数が旧来の自民党政治に飽き飽きしている。なのに、それに応える自民党改革、具体的には清新な候補者の擁立が行われていない現状を忘れてはいけない。
 政権を獲得できなかったら民主党は分裂するという見方もある。だが、どう探っても麻生周辺の誰も戦略的な動きをしていない。具体的な工作がない。風向きだけを見ての行き当たりばったり。
 ここは予算案と関連法案を参院に送り、民主党など野党が反対表明した段階で即座に解散するのが正しい。国民の多数は、自民党政治の継続を望んでいないが、景気対策は望んでいる。ならば解散後は早期に対策を実現し、「安心社会」に向かうために衆院3分の2以上の勢力が結集する必要がある。(後略)

 

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