西松建設違法献金事件によって政界は大混乱、景気・経済対策どころではなくなっている中、産業界は3月決算、その後の5月の決算発表までが当面の正念場。「自動車、電機、アパレルで大型救済合併」の噂が取り沙汰されている。
新聞とテレビを中心としたメディア業界も、大掛かりな淘汰が避けられない。背景にあるのは、国内市場の縮小と人口減少、企業業績の悪化、消費者ニーズの多様化、そしてインターネットの台頭。その結果、旧態依然の高コスト経営が抜本改革を迫られているわけだ。なにしろ命綱である広告の落ち込みが半端でない。しかも問題は、景気や外需の大減速に端を発した今回の広告減少が決して一過性のものではないことだ。メーカーから流通、建設・不動産など大手クライアントはただでさえ総崩れ。しかもメーカーにしろ、流通、金融にしろ各業界のガリバー化の進展は、クライアント数を減少させ、ユーザー訴求の必要性も急速に萎ませる。さらに、最大顧客の自動車、電機のグローバル化、海外シフトも景気サイクルと関係なく進んでいく。広告宣伝費の縮小は構造的なものであり、「さすがに保守的な総務省も、メディア再編に向けてようやく重い腰をあげつつある」(永田町関係者)という。
発行部数と広告の減少に喘ぎ、あの朝日新聞も2008年九月中間決算で初めて赤字に転落した新聞業界。危機の本質はビジネスモデルそのものの崩壊であり、「人口が減り、パイだけでなくネットなどその手法も多様化している」(大手紙幹部)ことにある。昨年末からの世界経済危機によって広告収入は2割も減少。さらに、半ば公然と行われてきた「押し紙」といわれる発行部数の水増しに対してクライアントからの値下げ圧力が増し、これに用紙代の値上げが追い打ちをかける。とてもではないが夕刊の廃止程度で事は済みそうもない。業界内の淘汰・再編にとどまらず、外資や異業種の参入もありえないことではない。
長らく低空飛行が続いてきた毎日新聞は、「関連会社の東日印刷が請け負っている創価学会の聖教新聞の利益で辛うじて生き延びている」(業界関係者)のが実情。産経新聞も、子会社の売却益で割増退職金付きの早期希望退職を募るなどスリム化を進めているが、「出資など外部からの支援なくして生き残りは難しい」(金融関係者)。その場合、フジ・メディア・ホールディングス傘下入りが有力視されるが、「産経の住田良能社長とフジの日枝久会長は不仲」(業界関係者)とあって、先行きは不透明だ。2期連続減収の日本経済新聞は、広告減少が著しいうえに、「大手メーカーへの依存度が高く、流通や中堅企業に対する営業力が弱い」(大手広告代理店)のがウィークポイント。ボーナスカットや社用車の削減、名刺の裏面廃止など経費圧縮に手をつけているが、所詮は弥縫策。豪華な本社ビルの竣工も大きな重荷だ。また、九期連続赤字が確実で満身創痍の時事通信に至っては、電通株の食い潰しで辛うじて延命しているのが実情だ。
テレビ業界も数年前から広告収入の落ち込みが顕著で、製作費の削減、番組の質的低下、視聴率低下という悪循環に陥っている。
テレビ朝日が開局以来の最終赤字に転落、日本テレビも上場以来初の営業赤字に転落。その日テレでは「将来的に読売新聞と報道部門を統合するとの話が囁かれている」(同社関係者)という。(後略)