経 済
日本振興銀行の危険な正体
銀行の皮を被った投資ファンド【金融ジャーナリスト匿名座談会】
A 前回の座談会で取り上げたSFCGの一件が結局、火を噴いたね。
C まあ、予想の通りとはいえ、随分と怪しげな倒産劇だった。
B 本当に怪しい(笑)。計画倒産と言われても仕方がない。結論を急げば、民事再生は不可能になるだろう。身から出た錆だ。
C しかし、これから大変な騒ぎに発展するだろうね。刑事事件への発展も間違いなし。最終決着は相当に先のことになるだろうけど。
A 3月3日の参院財政金融委員会でも取り上げられたね。前回の我々の座談会が国会での問題追及に一役買った感じだが、今回も国会議員の方々に材料を提供しようか。
B やはり見逃せないのは日本振興銀行の存在だ。いったい、この銀行は何なのか。
A 竹中平蔵氏が金融担当大臣を務めて、五味廣文氏が長官を務めていた金融庁時代に、「中小零細企業の資金繰りのための融資をする」という名目で、日銀出身の経営コンサルタント、木村剛氏が創設した銀行だよ(笑)。
C それにしても設立に至る経緯が不透明だった。木村氏は、竹中大臣のスタッフの一人で、大臣のタスクフォースのメンバー。しかも、金融庁が行政の基盤としている金融検査マニュアルを策定した際の外部メンバーでもあった。そんな人物が突然、銀行設立の申請を出し、あっという間に認可を得た。当時、金融庁との癒着や不透明な関係が問題視されたが、今回も奇妙だ。
A 日本振興銀行は、SFCGから商工ローン債権を数百億円規模で譲り受けている。しかも、SFCGの元社員たちを雇用している。会社の名前は日本振興銀行だが、実質的には、SFCGとは別の器で『SFCG』を営んでいるようなものだ。
B そう。預金取扱い金融機関というより、預金取扱い商工ローン業者だ。確か、銀行設立の際には、無担保事業融資をやると言っていたはずだが、今はそれをやらずに、保証人付き融資をやっている。しかも、ローン保証は、実質的に支配下に入れたNISグループや同社の子会社だった旧アプレックにやらせている。
C NISグループや旧アプレックを不良債権の掃き溜めにしていくつもりか。
A そんな銀行を金融庁は認め続けるのか。金融庁の中堅幹部の中には「日本振興銀行は問題だ」とみている人が少なくないが、どうも上層部の動きが鈍い。
B 銀行設立の際の問題に遡って責任を追及されるのを恐れているのではないか。金融庁のお役人は自己保身の塊だからね。
C 債権譲渡については、国会でも問題にされたが、金融庁の三国谷勝範監督局長は「債権譲渡は所定の手続きに従って行われる一般的な方法論としてあろうかと思う。個別の事案についての言及は差し控えさせていただく」と、見事なほど内容のない答弁をしている。
B 三国谷氏は佐藤長官の覚えがいい。次期長官とも予想されている人物だ。佐藤氏は、五味前長官の子分のような人。ウヤムヤ3人組だから、答弁もウヤムヤになる。
C しかし、債権譲渡は「所定の手続き」ではなかった。なにしろ二重譲渡だったんだからね。すでに証券化していた債権を日本振興銀行にも譲渡するというとんでもないことをSFCGはやったわけだ。これは法律違反であり、故意である以上、詐欺といっていい。
A 証券化の原債権として譲渡登記していたほうが時期的に早い以上、日本振興銀行への債権譲渡は無効になるんじゃないかな。振興銀行が被害者の立場でSFCGを刑事告発するにしても、無効な債権譲渡に基づいて計上した利益は結局「不当利益」となる。振興銀行としては特別損失、あるいは、それが一回で済まなければ営業損失として処理しなければならない。
B 利益が吹き飛んで赤字に転落するかもしれないということだね。そうなると、「黒字転換の利益還元」と称してやってきた高利預金セールスはできなくなる。
A そもそも、日本振興銀行は何を原資としてSFCGのローン債権を譲り受けたり、NISグループなどへ出資してきたのか。一般の人たちから集めた預金だとしたら、やはり問題だろう。買収や債権投資は、銀行ではなく投資ファンドのビジネスモデルだ。振興銀行の実態は預金を取り扱うファンドで、仮にその預金が特定少数者の高利預金だったら、その利息は配当に近い。私募ファンドのようなものだ。もう一度言うが、そんなビジネスをやっている振興銀行を「銀行」として認めていいのか。国会議員の皆さんも、この点を追及してほしい。金融庁が特別検査を実施したうえで、そのチェックを国会が行うべきだ。
(後略)