記事(一部抜粋):2009年3月掲載

経 済

「丸井今井」発の百貨店ドミノ倒し

地方経済はいよいよ重大局面に

 経済の悪いニュースの第1号は、いつも北海道からやってくる。
 1997年11月、北海道拓殖銀行の経営が破綻し、金融パニックの引き金を引いた。2007年3月には夕張市が財政再建団体に指定され、全国の地方自治体および自治体病院危機の発火点になった。そして今回は、北海道最大手の百貨店「丸井今井」(本店・札幌市。畑中幸一社長)が1月29日に民事再生法の適用を札幌地裁に申請し、自主再建を断念した。
 今回の丸井今井の破綻は「地方百貨店のドミノ倒し的破綻の引き金となる可能性が高い」と、大手百貨店幹部は指摘する。
 日用品卸業の営業マンは「丸井今井の破綻をきっかけに、すべての地方百貨店との取引を見直さざるをえない。地方百貨店の多くは丸井今井と大同小異」と語る。
 ドミノ倒しが起こるとしたら、その要因は取引先の信用収縮だ。仕入れが困難になり、欠品が相次ぐ事態になれば、地方百貨店はひとたまりもないからだ。
 2月2日、東京・芝公園の「メルパルク東京」で開かれた丸井今井の債権者説明会。金融機関や取引業者など約850人が参加した説明会は午前10時の開始から2時間近くに及び、不安と反発が渦巻く中で閉幕した。説明会での最大の関心事はやはり、今後の取引の安全性だった。
「こうなったのはお気の毒だが、我々の立場も同じように厳しい。丸井今井さんには、2次3次災害を防ぐための解決策を考えて欲しい。そこで一つ提案がある。委託商品の所有権は現在、丸井今井さん側にあるが、これを消化取引に変えて欲しい。つまり当社の所有に戻してもらえないか」
「消化取引は現金での支払いに変えていただきたい。丸井今井さんの場合、支払い条件は現状では六〇日のサイトだが、こんなに長くては取引を継続できない」
 債権者説明会では、取引業者から厳しい質問が相次いだ。
 回答に当たった申立代理人の橋本昭夫、大川哲也両弁護士は「所有権を変えることは認めがたい」「ご意見がいろいろあるのは認識しているが、従前と同じサイトでお願いしたい」と防戦に追われた。
 だが出席者は一様に納得せず、閉会後、「取引の継続は困難だ」「マジメに再建を考えているのか」と吐き捨てる取引先関係者がテレビに映し出された。
 説明会で多く質問が出たのは「伊勢丹の支援の有無」だった。百貨店大手の伊勢丹は、丸井今井の破綻直前まで11.6%の持ち株を所有する第3位株主。新宿本店長だった関根純氏を取締役として送り込み、再建を支えてきた。(後略)

 

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