「野村の株価下落は、企業価値を高めるためにリストラをしろと市場が要求しているようなもの。きっとリーマン出身者はほくそ笑んでいることでしょう」
ある証券会社幹部は、野村ホールディングス(HD)の一向に下げ止まらない株価をみながら、そんな感想を漏らす。
昨年9月、米国の大手証券会社、リーマン・ブラザーズが破綻した。その社員約8000人が、野村社員の何倍もの高給で迎えられ、今では野村の社員となっている。業績悪化に伴う野村株の下落は、リーマンからの移籍組にとっても、決して歓迎できるものではないだろう。だが、証券会社幹部は「一種のパックマンディフェンスですよ」と意味深な笑顔を浮かべる。
「パックマンディフェンス」とは、呑み込もうとする相手を反対に呑み込んでしまう「逆買収」のことだ。リーマンを呑み込んだ野村が、逆にリーマンの残党に呑み込まれるかもしれない。証券会社幹部はそう言っているのだ。
(中略)
野村は今後、大掛かりなリストラに手をつけざるを得ない。しかし証券会社が経費を削減するといっても、コンピュータシステムの管理費削減などは知れている。結局、人員削減と店舗網の縮小が主体とならざるを得ない。
だから、今回の野村株の下落は「リストラの催促相場だ」(証券会社幹部)と見られている。本格的な人員削減による経費削減策を打ち出さない限り、株価下落は止まらないというわけだ。
このような厳しい環境で、巨額の費用を使ってリーマン社員を大量に採用してしまった渡部賢一社長の責任は重大だ。
大量採用してまだ間もないのに、人員削減に踏み切れば、経営判断を誤ったことを自ら認めるのも同然だ。渡部社長はいま針の筵の上に座っている心境だろう。(後略)