記事(一部抜粋):2009年2月掲載

経 済

止まらない信用収縮の悪循環

混乱する社債市場、大企業も資金不足に【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)A 実体経済が悪化する中、大企業・中堅企業の格付けが引き下げられるケースが増えてきている。しかも、金融庁は格付け会社に対する規制を強化する姿勢をみせている。
C それは世界的な流れだが、規制が強化されれば、格付け会社は、甘い格付けをして後々問題が発生する事態を避けようとするから、どうしても格付けに慎重になる。つまり厳しい格付けをする可能性が高い。企業の格下げが頻発するかもしれないということだ。格付けされる企業には資金調達面で逆風が吹く。
B そうなる可能性は高いだろうね。問題は、そうなったら社債やCPの発行条件が悪化し、場合によっては発行そのものができなくなる可能性が出てくることだ。
A そうなれば企業の資金調達は銀行借入に殺到するだろう。つまり、昨年暮れのような事態が再燃するわけだ。
C そのうえ格付けが下がると、現在の自己資本比率規制であるバーゼル?の下では、銀行は融資資産のリスクウェートを引き上げざるをえない。
A リスクウェートを引き上げるということは、自己資本比率算定上の分母である資産額が膨張するということだから、増資がない限り自己資本比率の低下リスクが高まるということだね。
C その通り。自己資本比率が低下すれば、銀行は融資をしにくくなる。そうなれば貸し渋り批判も強まるだろう。
B 融資能力を高めるために再度増資をしようとしても、資本市場が不安定化している中での増資は難しい。それでも無理して巨額の増資を断行すれば、株式相場を崩す要因となる。そうなったらさらに銀行批判の声が高まる。
C かつての金融危機では、実際そういう状況が発生した。銀行にとっては「前門の虎、後門の狼」の事態だ。
A メガバンクもそのうち改正金融機能強化法によって公的資金を注入しなければならなくなる、と主張する人もいる。一笑に付すことができないのが恐い。。
B 時価会計を凍結すれば、評価損の計上を免れて、その分、自己資本比率が低下する懸念は解消する。ただ、凍結した場合に、株式市場でどのように評価されるのかという問題がある。これも「前門の虎、後門の狼」だ。
C 大手銀行といえども安穏とはしてはいられない状況になってきたということだ。みずほの新トップたちに「慣らし運転」の暇はないな。(後略)

 

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