記事(一部抜粋):2009年2月掲載

政 治

見切られた渡辺の「国民運動」

政局つくる千両役者の「小泉」【永田町25時】

 世論調査で麻生内閣の支持率はついに20%を割った。対して、自民党を離党した渡辺喜美の人気が高い。「首相にふさわしいのは誰か」という設問では、麻生太郎を抜き、小沢一郎、小泉純一郎に次いで3位につけている。渡辺は離党後、新党を視野に「国民運動」を展開するという。渡辺に支持が集まるようだと、自民党の危機はさらに深刻になる。
 ところが、自民党幹部のほとんどは渡辺を歯牙にもかけない態度だ。なぜか。渡辺には新党をつくる力も、旋風を巻き起こす力もないと見切っているからだ。渡辺人気は、麻生批判のパフォーマンスに対する拍手。時間とともに消えると政治経験が語っているのだ。
 渡辺は麻生を批判する理由として、自らが行革担当相として取り組んだ公務員改革を骨抜きにしたことを挙げる。具体的には官僚が天下りを繰り返す「わたり」の斡旋を、昨年12月に政令で「企業側の依頼に応じるため」に「必要不可欠な場合はできる」としたことだという。麻生政権の「わたり」を原則禁止とする方針は変わっていないが、渡辺は「例外をつくったのが許せない」と憤る。
 たしかに公務員の腐敗、堕落への国民の批判は強い。だが現在、公務員改革が国民多数の関心を呼び、旋風を巻き起こすような政治テーマかといえば「ノー」だ。大不況に脅える国民の多数は、公務員にもっと働けと言っているのであり、もっと締め上げろと言っているわけではない。
 渡辺は麻生批判の続きとして、第2次補正予算案に盛り込まれた定額給付金を撤回するよう求め、衆院本会議の採決を退席した。同調した自民党議員は松浪健太ただ一人だ。そもそも公務員改革と定額給付金に関連はない。渡辺は口八丁で反対の理屈を語るが、麻生の足を引っ張るのがパフォーマンスの目的なのは明らかだ。「小沢一郎に『民主党政権ができたら閣僚にする。将来の首相候補だ』と煽てられた」と、与野党国会議員とベテラン政治記者は確信している。
 麻生が恐れたのは渡辺への同調者の数が16人を超える事態。与党衆院議席が参院否決法案の再議決に必要な3分の2を割れば政権は崩壊する。そこで派閥領袖に引き締めを要請すると、少なくとも渡辺への同調という形での造反は膨らまないことが判明した。渡辺の不徳か、自民党内の評判はすこぶる悪いのだ。
 渡辺騒動の直後、小泉純一郎が久々に動いた。「国会議員を半数に」とぶち上げたのだ。麻生がこれに飛びつき、国会議員選挙制度の抜本見直しの検討を党に指示した。
「小泉案」は衆院、参院を一本化して2院制を1院制に変更し、議員数を削減するというもの。憲法改正が必要なため即座には難しいが、次の衆院選挙の自民党選挙公約の目玉にしろという。
 自民党への支持が低下しているのは「政党としての賞味期限切れ」を国民の多くが感じているためだ。だからかつて小泉が「自民党をぶっ壊す」とやったら国民は拍手喝采した。選挙制度改革はすなわち現在の政界をぶっ壊すこと。小泉の勘は相変わらず冴えている。(後略)

 

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