記事(一部抜粋):2009年1月掲載

経 済

資金難SFCG「株価高騰」の怪

持ち株会社化を見据えた深謀遠慮?【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)
C 今までは非製造業で資金繰り難が目立っていたが、製造業も悪化してきたのは深刻だ。製造業から商社などにも波及する恐れがある。
A いや、すでにそうなっている。中堅以下の商社は厳しいし、大手クラスもいずれきつくなるだろう。
B 不動産関連に至っては「壊滅」のイメージだ。経営難とはこれまで無縁だった旧財閥系の大手不動産会社からも「資金調達が厳しくなった」という悲痛な声が聞かれるようになってきた。
C ましてやデペロッパーなど新興不動産はお手上げだ。国土交通省が不動産業向けの緊急融資を実施するというけど、デベロッパーに資金が回るとは思えない。街の不動産屋さんなどの救済に回すべきだ。おそらくそうなるだろう。
A 面白い話がある。ある大手銀行が新興不動産会社への当座貸越枠数億円を取りやめた。その新興不動産会社は現在、倒産予備軍の筆頭格といわれている。銀行の判断も無理からぬことだ。しかし当の不動産会社は死に物狂いだ。資金繰り倒産が迫っているわけだからね。そこで、この会社は金融庁の貸し渋り相談に駆け込んだ。貸し渋りの被害者としてね。
B 金融庁もさぞ困惑しているだろう。
A そう。大変困っているらしい(笑)。銀行には不良債権を発生させるなと指導する一方で、経営が悪化している企業の相談を受けるなんて矛盾だからね。
C どだい金融庁がそんな相談を始めたのがおかしい。貸し渋り相談は大切だが、それは公正取引委員会なりがやる筋合いのもの。金融庁は「自分たちは正しいことをやっている」というのをアピールしたい願望が非常に強い役所だから、深く考えずに始めてしまったんだろう。
A 興味深いのは、その新興不動産会社の株価がこの間、急騰したことだ。経営実態からすると、ありえないことが起きている。
B たしかに、ありえない値動きをしている銘柄はいくつかある。そのひとつがSFCG(旧商工ファンド)だ。連日のストップ高で棒上げし、市場関係者の首をかしげさせている。
C SFCGはこの間、資金繰り危機を懸念されてきていた。実際、11月末には外資系銀行への返済ができなかった。返済延長などを貸し手と協議している最中だと思うが、とにかく返済できなかったという事実ははっきりしている。ところが株価は急騰した。おかしな話だね。
A SFCGはリーマンブラザーズからの借入が巨額だったが、それをほとんど返済したと発表している。残額は60億円弱だと言っている。しかし実は、リーマンの子会社を通じた不動産担保融資の証券化で資金調達した分が200億円以上残っている。これはどういう処理になるんだろう。まったく開示されてないけど。
B SFCGは最近、持ち株会社の設立構想を発表した。SFCGを非上場化して、新たに設立する持ち株会社の傘下に入れるという話だ。代わって持ち株会社を上場させるという。ところが、発表して間もなくこれを延期した。それなのに2月15日に臨時株主総会を招集する。議題は役員改選などで、この持ち株会社問題は議題に入っていない。そうした中、臨時株主総会の株主権数が確定する期日まで、株価は連日のストップ高を続けた。
A それは興味深い話だね。
B そこで噂されているのがストップ高の背景だ。2月の臨時株主総会で圧倒的多数の議決権を確保するために、SFCGグループ、あるいはオーナーの大島健伸氏に近い筋が株を買い続けたというのが噂の内容だ。
C なるほど。臨時株主総会での主導権確保が目的か。しかし、なぜそこまでしないといけないのかがよく分からない。
B ここから先は想像だよ(笑)。株主総会では、あらかじめ株主に知らせていない議題であっても、会社側は緊急動議として提出することができる。緊急動議は、株主たちの支持があればその日の株主総会で成立させることができる。
A つまり延期した持ち株会社化を緊急動議として提出し、それを首尾よく成立させるために、この日の株主総会の多数になるまでの議決権を確保しようと、株を買いまくった。
C そうした動きの裏で、株価がこの間不自然に上がったいわくつき企業同士による支え合い活動があったと。
B そんなこと言ってないよ(笑)。要するに、延期したままの持ち株会社化、SFCGの非上場化を一挙に実現へと持っていくシナリオがあったのではないかということ。非上場化すれば、事業の撤退や再編が簡単になるし、資金繰り問題も外部から見えにくくなる。事業売却も容易になる。
C だけど、誰がSFCGから事業を買うわけ?(後略)

 

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