(前略)
再起を図るべく米国に居を構えた折口だが、グッドウィル問題は終息していなかった。国税当局が、折口にピークをもたらしたクリスタル買収に不明朗な資金の流れがあったとして、強制調査(査察)に乗り出した。
《人材派遣大手グッドウィル・グループ(現ラディアホールディングス)による人材サービス会社の買収を巡り、買収に関与した公認会計士が脱税した疑いが強まったとして、東京国税局は、16日、所得税法違反(脱税)容疑で強制調査(査察)に着手した》(『日本経済新聞』10月17日付)
確かに、国税が狙ってもおかしくないM&A劇だった。
クリスタルは京都に本社を置く人材派遣会社で、タイアップ、アクティス、リライアンスといった横文字社名の100社以上でグループを形成、売上高5000億円は未上場とはいえ立派な社会的存在であったが、オーナーの林純一の秘密主義もあって、その全容はまったく伝わらなかった。
(中略)
捜査当局が、この不可解な「M&A劇」に注目するのは当然のことだろう。
110月31日の事実上の買収(IRでは出資のみの公表)から11月18日の正式発表の間に株価が急騰、証券取引等監視委員会が調査に乗り出したことがある。また、M&Aに「闇勢力が関与」という疑いを持った警視庁が内偵に入り、東京地検特捜部も情報を収集した。が、結果的に先鞭をつけたのは東京国税局。コリンシアンを率いる中澤が、報酬の一部を申告していなかった。
これだけなら個人の犯罪で、「うっかりミス」ということにもなるが、絡み合った人脈の複雑さと、もたらされた金額の大きさを考えれば、そんな単純な話ではない。東京国税局もそれを背後から支える地検特捜部も、それだけで終わらせるつもりはない。
「プロである中澤氏が、脱税のような単純なミスを犯すわけがない。分配の調整に失敗、申告しない出資者の分を、結果的に被ったんでしょう。だからといって、彼に責任がないとは思えない。500億円の買収に1186億円のファンドを用意したことがそもそもおかしい」(捜査関係者)
見方を変えれば、M&Aに乗じて行われたグッドウィルによる特定勢力への利益供与、もしくは贈与となるわけで、国税の調べが進めば、その謎が解明されて、新たな事件へとつながる可能性がある。
また、コリンシアンで中澤を補佐する鬼頭和孝は、業績不振企業を舞台にした資金調達役として活躍、クリスタル買収劇の後は、千年の杜(現東邦グローバルアソシエイツ)、トランスデジタルなどの経営に関与した。(後略)