記事(一部抜粋):2008年11月掲載

経 済

恐慌こそ基盤再整備のチャンス

大財閥同士の熾烈な潰し合い【証券マン「オフレコ」座談会】

(前略)
A 世界同時株安が止まらないのは、事実上の「グラス・スティーガル法」の復活が大きいような気がする。
B 投資銀行最大手のゴールドマン・サックス(GS)とモルガン・スタンレー(MS)が「持ち株会社をつくって、投資銀行と商業銀行を分離する」と発表したんだってね。
A 1929年の「世界大恐慌」の反省から、米国は33年に預金銀行業務(商業銀行)と証券業務(投資銀行)の兼営や、連邦準備制度加盟銀行が証券会社を系列に置くことを禁止した。それが「グラス・スティーガル法」。だが「規制緩和」の流れを受けて1999年には銀行と証券の垣根が取っ払われていた。
B その垣根復活が、今回の株価下落とどう関係するの?
C「投資銀行の縮小」を意味するからじゃないの? リーマン・ブラザーズがつぶれて解体されたり、投資銀行の大幅なリストラが始まっているわけだから。
A 投資銀行は投機資金の提供先(出し手)だった。たとえば、ライブドアの堀江貴文がニッポン放送の株式を買い占めた時、私募転換社債(MSCB)の形で800億円を出したのはリーマン。「この出資にSFCG(旧商工ローン)も関わったのではないか」とも言われているけどね。前号の「丸紅架空投資事件」の資金の出し手もリーマンだった。
C 山っ気のある投機家(仕手筋)やヘッジファンドへの資金の出し手が、投資銀行だったわけだ。
A 米国株以上に日本株の下げがキツイのは、おそらく、投資銀行の資金引き上げによる換金売りが原因だろう。
B そう言えば、リーマンが破綻した途端、SFCGが中小企業の融資先4万件に「一括返済」を求める文書を送り付けたことが問題となっている。
C サブプライムという汚染米をバラまいたのが米国なら、それにともなう株価下落に拍車を掛けているのも米国。これじゃ汚染米というより「汚染米国」。
A 米国というより巨大財閥といった方が良いと思う。1929年の世界大恐慌時に、安値で株を買い集めて大財閥となったのがロックフェラーだ。恐慌は財閥にとっては基盤再整備のまたとないチャンスとなる。
B 潰れるのは新興企業ということか?
C 大財閥はともかく、中小財閥は潰れている。日本のバブル崩壊で、90年代には旧安田財閥(芙蓉グループ)の大倉商事と山一証券が倒産し、安田生命も事実上、三菱グループの明治生命に吸収合併された。
A 今回、米国でも似たようなことが起こっている。まず、JPモルガン・チェースが証券大手ベアー・スターンズを吸収合併した。FRBはJPモルガンに最大290億ドルの特別融資を決めた。これは事実上の損失補填だ。ところがリーマン・ブラザーズには特別融資を行わずに潰した。この差はいったい何だったのか?
C JPモルガンはバリバリのロックフェラー系だから、FRBがカネを出したということなんじゃないの?
B それじゃ、リーマンは? これも「ロックフェラー財閥に近い」という話が出てるけど……。
A たしかにリーマンはGS同様、ロックフェラーとロスチャイルドの人脈が入り乱れている。しかし、リーマン破綻後、英バークレイズや野村証券が北米や中東・アジアの投資部門をロスチャイルドのファイナンシャル・アドバイザー(FA)の元で買収しているところを見ると、ロスチャイルドに近いんじゃないだろうか。
B だから、ロスチャイルド系の銀行がリーマン救済に名乗りを挙げても、FRBは特別融資を実施しなかったと。
C 昔からロスチャイルドとの関係が深い三井住友銀行は英バークレイズに出資して大株主となっている。野村は以前からロスチャイルドと、M&Aビジネスで業務提携する関係にあるから、「破綻後、ロスチャイルド人脈の受け皿になった」と見ることもできないことはない。
B それじゃ、AIGを救済したのは? 元代表のモーリス・グリーンバーグは、反ロックフェラーといわれているよ。
A AIGを知るには、国際諮問委員会のメンバーを見るといいかもしれない。委員長は「ロックフェラーの番頭」と呼ばれていたヘンリー・キッシンジャーで、他にもシティグループやロックフェラー財団出身者が多い。
C オリックス代表の宮内義彦もメンバーに入っているようだね。
A 40年くらい前に、チェースマンハッタン銀行(現JPモルガン・チェース)から資金援助を受けてからの関係だろう。チェースはロックフェラーがつくった銀行で、ロックフェラーと三菱の関係は良好。オリックスのメインバンクも三菱UFJだ。(後略)

 

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