(前略)
具体的な相談事例を、国民生活センターの資料から抜粋してみよう(一部要約)。
《もともと持病があり、保険への新規加入はできないと思っていたが、「誰でも簡単に入れる」とテレビで宣伝しているのを見て、保険会社に電話で申し込み契約した。
最近、持病が悪化し1カ月ほど入院した。医師から「また入院が必要」といわれ、入院費用が心配になり、保険会社に入院保険金の請求をした。ところが、保険会社からは「契約以前からの既往症(持病)は保険の対象にならない」と支払いを断られた。
契約時に保険会社からもらった約款やパンフレットには「既往症は保障されない」旨が記載されていたが、「誰でも簡単に、医師による診査も健康状態の告知も要らずに加入でき、いざという時には保険金が支払われる」というテレビCMの内容から、「誰にでも、どのような場合でも保険金が支払われる」と理解していたので、該当資料を確認していなかった。
また、契約時に「保険金が支払われない場合がある」との口頭での説明は何もなかった。消費者に正しく理解される広告や説明をすべきであり、「騙された」という思いが強い》(60代男性、無職)
トラブルが圧倒的に多いのは外資系の保険会社だ。「誰でも入れます」を謳い文句にしているのはほとんどが外資系といっていいからだ。しかし大手マスコミは、急増する外資系保険会社のトラブルをほとんどといっていいほど報じない。国内生保のベテラン営業マンはこう漏らす。
「1つには、外資がテレビ、新聞など大手マスコミにとって、広告主として大のお得意様だからです。しかしもっと重要なのは、こうした外資生保の日本進出を後押ししているのが、わが国の政府だからでしょう」
(中略)
そうはいっても、度を超せば外資でもお仕置きを受ける。
その稀有なケースが2007年10月、外資系生保大手「アリコジャパン」に対する処分だ。新聞広告やパンフレットで謳った医療保険の初期がんの支払いに関する記述が、消費者に誤解を与える不当表示にあたるとして、公正取引委員会が景品表示法違反(優良誤認)に基づく排除命令を出したのだ。保険会社への排除命令は03年の日本生命に次いで2度目である。
アリコはパンフレットに「がん(悪性新生物)一括300万円(上皮内新生物60万円)」と大書していた。上皮内新生物は初期がんの一種で、このパンフレットを見た消費者は初期がんと診断されれば60万円の保険金が下りると思うだろう。
ところが医療手術の発達により、この初期がんはほとんど入院せずに、内視鏡手術で取り除くことができる。アリコではその場合、60万円は支払われない規程になっていた。(後略)