政 治
負け覚悟で出馬した与謝野の深謀
ナベツネと描く「大連立」のシナリオ【永田町25時】
福田康夫は我慢しきれなかった。臨時国会に突入すれば泥まみれになるのが明らかになり、惨めな最後を迎えたくないという恐怖感が政権への執着を断ち切らせた。
そもそも内閣改造は、来年1月まで政権を維持し自らの手で解散総選挙をするためだった。プライドの高い福田が麻生太郎に膝を屈して幹事長就任を要請したのも、また「自らの手で選挙をするつもりはない」と偽ったのも、政権を1日でも長く持たせるため。ところが改造後、状況が激変した。
まず農水相に任命した太田誠一の事務諸経費問題が表面化、辞任必至となった。次に公明党、創価学会の「裏切り」が明らかになった。それは、学会が幹事長の麻生と民主党代表の小沢一郎と、それぞれ別個に密約するという、福田にとって驚愕の内容だった。もともと権力闘争のドロドロが嫌いな福田は、それを知った途端、戦う気力を喪失した。
創価学会関西総局長の西口良三と小沢は8月下旬、京都と東京都内で密かに会談した。公明党と学会の政教一致を告発している元公明党委員長の矢野絢也と名誉会長の池田大作を国会に呼び出さない、その代償として学会が衆院選で民主党議員の一部を裏から応援するというだ。そうなれば自民党惨敗の可能性は強まる。京都駅のホテルで2人が会ったのは8月22日、小沢が大阪に衆院候補の応援に行き、通天閣近くの串揚げ屋でパフォーマンスを演じたその夜だった。
一方、麻生も同じころ創価学会会長の原田稔、理事長の正木正明と極秘に会談した。その席で麻生は、公明党が求める定額減税とインド洋での海上自衛隊の給油活動への反対を表明。代わりに学会は、時期が来れば福田の退陣、麻生への禅譲に力を貸すと約束した。
この情報は福田の意欲を殺ぐための麻生陣営の陰謀だったのかもしれない。ただ、これで福田がやる気をなくしたのは事実だ。
ところが、この福田退陣の流れを利用して、さらに大きな陰謀が進んでいた。立役者は与謝野馨だ。麻生陣営もこれには気づかなかった。背後にいるのはまたもナベツネ、読売新聞会長の渡邊恒雄だ。
与謝野がなぜ、これまで親密だった麻生に対抗し、しかも負けを覚悟で総裁選に出馬したのか。そこにこの陰謀のカギがある。(後略)