記事(一部抜粋):2008年9月掲載

経 済

日本経済に忍び寄る危機

強まる「金融庁不況」の様相【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)
C とにかくアーバンの一件をきっかけに、不動産関連会社、特に新興デベロッパーの倒産が相次ぐだろう。
A 新興デベロッパーどころか、最近では老舗のマンション業者の経営も危ぶまれ始めている。ゼネコンへの波及も取り沙汰されているし、かなりシリアスな局面に差し掛かっている。不動産市況が怪しくなり出してからも、中堅クラスの不動産業者はけっこう物件を買い込んでいた。そうした業者の資金繰り悪化が深刻になっている。そのクラスがバタバタ倒産していくんじゃないかな。
C 銀行などの融資姿勢がものすごく慎重になっているからね。資金繰りがつかなくて倒産というケースは今後も増えることは間違いない。
B それで金融庁は貸し渋りの調査に乗り出すことになった。しかし、それって一種の笑い話だね。
A まったくだ。そもそも貸し渋りの原因をつくったのは金融庁だからね。金融庁が銀行などへの検査で厳しく不動産関連融資やノンリコースローンをチェックし、その意気込みを肌身に感じた銀行が「これはまずい」と融資を絞っていった。その結果、不動産関連分野に資金が流れ込まなくなって、不動産市況が一気に悪化した。そして不動産市況の悪化が融資パイプを先細りさせ、融資が細れば不動産市況がさらに悪化するというパターンで、どんどん事態が悪化したわけだ。金融庁は、そういう循環バターンの起点に自分たちがいるということまで調査して、報告書を出すのかな(笑)。
B 金融庁については、よくよく論議すべきだね。金融庁は不良債権問題が片付いたとき、その存在意義を失いかけた。そこで次に、消費者保護という存在意義をつくり上げた。しかし、そのうちに不良債権が増え出した。そうこうするうちに、コンプライアンス、消費者保護だった検査の基軸を、再び、資産査定に戻している。
A なんだか自作自演という感じだ。消費者保護の官庁、消費者庁が発足すれば、金融庁の消費者保護行政の大半は新設官庁へと移管されるわけだしね。
C 問題は今後、銀行など金融機関の決算がどうなっていくかだ。第1四半期の銀行決算は悲惨だった。不良債権が増大して利益を相当食ったからだ。
A あれは序の口だ。なぜなら前期末ベースの自己査定による貸倒引当金計上を行った決算ではないから。その前段階だ。だから中間決算は一段と厳しい内容にならざるを得ない。これから本当の厳しい局面が判明してくる。
B 不動産だけじゃなく、中小企業やノンバンクの経営も厳しい。それらが銀行決算にも反映してくる。
A 中小・零細企業の経営悪化は全国的な広がりをみせている。地方にいくほど深刻だ。地銀、第二地銀、信金、信組クラスの金融機関はいよいよ暗い局面に突入する。下手をすると、極端な経営悪化が判明することもあるだろう。金融庁は早期警戒制度の強化で、経営悪化した金融機関を合併で消し去ろうと画策しているが、果たしてうまくいくかどうか。
C 旧大蔵省がかつての金融危機の初期段階でやったのと同じことをやろうしている。過去のケースでは、そうした糊塗策が行き詰まったわけだが……。
A 彼らは厳しい検査によって、経営悪化金融機関がこの国から消え去ったことを手柄にしてきたが、実際はそうではなかったということがみえてきた。(後略)

 

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