記事(一部抜粋):2008年8月掲載

経 済

不動産不況さらに深刻化で

金融庁「責任回避工作」の姑息【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)
B しかし、なんといっても業種的に見て厳しいのは不動産関連だ。前回の座談会でも話したが、ディベロッパー、マンション開発などの新興勢力の倒産が始まった。すでにスルガコーポレーション、ゼファーが民事再生法の適用を申請しているが、この先、同様の倒産劇が続くのは避けられない。
C いまや完全に不動産不況に突入している。都心でもマンション販売が苦しくなって、売れ残り続出という話が頻繁に聞こえてくる。
A たしかに住宅販売はかなり激しくなってる。とにかく売れないので、みな値引きに走っている。在庫を抱えるより値引きしても処分したほうがいいという発想が業者に強まっているからだ。
C つまり業者も、厳しい状況が続くと覚悟しているわけだ。
B アーバンコーポレイションは6月危機を増資などでどうにか乗り切った。しかし、在庫不動産の処分に躍起になっていて、外資系ファンドなどに引き取りをしきりに要請している。問題はその先だ。在庫処分で現金化しても、次の資金調達の必要性がなくなるわけではない。数カ月中に再び危機が訪れるのは間違いないと思う。
C 銀行はこうした業種に対する融資をストップしている。ちょっと前は外資系投資銀行などが不動産の証券化やストラクチャードファイナンスで資金を提供していたが、その動きも乏しくなっている。
B 外資系投資銀行はサブプライム関連で自社の経営が悪化して、もう積極的なビジネスには動けなくなっているからね。
A それどころか、メリル・リンチのように、不動産関連のセクションのリストラを断行するケースも相次いでいる。事実上の事業撤退といってもいい動きだ。
B ところで、最近の金融庁の動きが面白いと思わない?
C どういうこと? 金融庁は官製不況もたらしたなどと散々不評を買ってきたけど。
B まあ、それに近いね。金融庁の検査がガラリと変わったという話だ。今まではコンプライアンス問題ばかりを調べていたが、ここにきて資産査定に集中し始めている。それだけ銀行の資産内容が悪化しているということだ。
A しかし一方では、不動産関連のノンリコースローンの検査が甘くなってきたという情報もある。複数の銀行関係者が言っていた。
B その通り。だから面白いと言ったんだ。不良債権が増え出したので、得意の資産査定でギリギリと銀行を締め付けるようになった一方で、なぜ、ノンリコースローンが甘くなるのか。明らかに矛盾する動きだ。
A 不動産市況の悪化の背景には、ノンリコースローンなど銀行の融資がストップしてしまったことがある。その結果、不動産価格が大幅に下落して、NISグループやSFCGのような不動産担保融資、実態は地上げ融資を行なってきたノンバンクが軒並み厳しくなった。これ以上、不動産分野が悪化すると、いずれ、誰が不動産市場を壊したのかという責任論が出てくる。もちろん政治問題化するリスクもある。
C つまり、そうなったら「金融庁悪者論」が出かねないので、それを回避するためにノンリコースローンの検査を甘くしたというわけか。
B いかにも役人らしい自己保身の発想だよ。
A それ以外に、この矛盾した行動の理由は見当たらない。しかし、ときすでに遅しだ。これだけ不動産価格が下落すると、もう銀行は手が出せない。金融検査マニュアルなどの縛りで融資はできなくなっている。不動産市況の悪化が、銀行の融資ストップという事態を招き、融資ストップが不動産関連会社の資金繰りを悪化させ、在庫の放出を促す。それで不動産価格がさらに下落し、銀行は一段と融資に慎重になる。
B 完全に負のスパイラルパターンだ。(後略)

 

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