記事(一部抜粋):2008年8月掲載

政 治

福田に追い風が吹き始めた

次期衆院選で小泉が全力で担ぐ【永田町25時】

 洞爺湖サミットは予想通りはかばかしい成果がなかった。原油急騰に伴う諸物価上昇、世界的な食糧不安に、首相の福田康夫は議長として明確な処方を示すリーダーシップを発揮できなかった。拉致、北方領土という日本固有の問題でも各国への遠慮と配慮が目立った。首相として力量はとても褒められたものではない。だが、本人の認識は違う。温暖化対策で一定の成果をあげたと胸を張り、内閣改造から衆院解散へと突き進む構えだ。
 元首相の小泉純一郎はサミット直前の講演で「内閣改造をするなら、衆院議員の任期はあと1年しかないので、首相は自分の手で衆院解散するだろうと思う人が多くなる」と語った。福田はこの小泉の言葉に乗った。自民党の中はまだ「国民人気のない福田に解散させるのは民主党に政権を渡す決意をするのと同じ」という考え方が多数。だから「福田がどのタイミングで政権を人気のある麻生太郎か小池百合子に渡すかが政局の焦点」と見る向きが多い。しかし流れは明らかに変わってきた。
 福田の後見役・森喜朗のサミット直後のテレビ番組での発言が、それを裏づける。「改造は解散とも絡むので野党は『審判を受けろ』という動きを加速するだろう。しかし首相は自分の内閣をつくったほうがいい」。そのうえで解散について「来年度予算を編成し、4月1日から水道をひねれば水が出るようにしておくのは与野党の責任。ここはみだりにケンカせず与野党で仲良く話し合って解散を決めてもいい」。つまり来年4月の予算成立後に福田の手で話し合い解散すべきというのだ。
 政局変化の背景にはいろいろな要因がある。まず第一は民主党の事情だ。先の通常国会参院本会議で福田に対する問責決議を成立させた民主党は、本来なら8月末に招集される臨時国会で福田内閣を総辞職か解散に追い込む姿勢をとらなければならない。だが9月に代表に再選されるまで小沢一郎は強硬姿勢を取らないとみられている。ガソリンなどの値上がりに庶民の悲鳴があがる中で、審議拒否による国会空転を続ければ小沢の再選に黄色信号が灯るからだ。
 次はポスト福田の一番手である麻生の迫力不足。前首相の安倍晋三ら一部に強力な取り巻きはいるものの、小泉、森らは反麻生を崩そうとせず、党内の支持は一向に広がらない。福田に退陣を迫るきっかけはつかめそうもない。
 加えて、元公明党委員長の矢野絢也に「政教一致」を材料に噛みつかれた公明党・創価学会が波風を避ける政局運営を望んでいる。福田にとっては当面どこからも強い攻撃がなさそうなのだ。
 さらに7月16日、福田を利する動きがあった。小沢と全国郵便局長会(全特)会長の浦野修が、国民新党代表の綿貫民輔の仲介でで会談、郵政民営化の見直しを民主党が次期衆院選のマニフェストに明記する代わりに、全特が両党の候補を支援することで合意したのだ。つまり次の衆院選ではまたまた「郵政民営化の是非」が大きな争点となる可能性が出てきた。
 小泉が福田を支持する最大の理由は、自民党内にも不満や異論がある小泉構造改革を後戻りさせないと約束しているからで、麻生を警戒するのは、小泉改革に対する麻生の態度が曖昧だからにほかならない。(後略)

 

※バックナンバーは1冊1,100円(税別)にてご注文承ります。 本サイトの他、オンライン書店Fujisan.co.jpからもご注文いただけます。
記事検索

【記事一覧へ】