記事(一部抜粋):2008年7月掲載

社会・文化

「リーマン」日米で窮地に立つ

これから地獄見をみる米系金融機関

(前略)ローンを組めない黒人やヒスパニックの貧しい人々に、ローンを組ませて住居を与える。さらに最初2年の金利は5〜6%と低くし、3年目以降に10%以上に設定、借りる側の意識もごまかすというトリックを使った。
 しかも破綻は目に見えているから、「飛ばし」で責任逃れをする。住宅ローンブローカー、住宅ローン会社、証券会社、投資銀行、商業銀行が、みんなで責任を押し付け合い、「ババ抜き」をやった。せめて格付けや保証会社がまともなら破綻は防げたが、格付け会社は証券化の際、発行体のいうままに最高格付け、保証会社は破綻の連鎖にお手上げの脆弱な存在でしかなかった。
 米国が世界に誇る金融システムは、「無から有を生み出す錬金術」を確立したかに思えたが、所詮、テクニックから生まれる利益などなかった。貧乏人に家は買えないのであり、そんなインチキに辿り着く金融システムは、バブル経済崩壊後の日本がそうであったように、一度、壊れなければならない。
 そういう意味で米系金融機関は、まだ地獄を見ておらず、ベア・スターンズに続く大手金融機関の破綻は避けられないと見られており、リーマンはその最右翼なのである。
 米国だけではない。日本のリーマン・ブラザーズ証券も危機に立たされている。それは、サブプライムローンとは無関係な投資の失敗によってである。
 警視庁は6月15日、大手商社・丸紅の信用を利用して詐欺を働き、1080億円を集めた医療コンサルタント「アスクレピオス」前社長の斎藤栄功らを逮捕した。被害金額は巨額だが、それより目を引いたのは、「生き馬の目を抜く」といわれるほどシビアなリーマンが、詐欺師集団の用意した偽造の印鑑証明や「偽の丸紅部長」にひっかかって371億円もの資金を、丸紅本体の財務などに確認することなく振り込み、うち321億円が未償還になっていることだ。
 被害者であるリーマンを貶めるつもりはないが、リーマンがアスクレピオスの架空のビジネスモデルを信じ、振り込みに至る経緯はあまりに安易で信じがたい。
 リーマンは丸紅に損害賠償を求めて提訴、それに対して丸紅は「当社の見解」で反論、「リーマンが享受する金利は25%と異常な高金利」であり、そんなビジネスなら、丸紅はリーマンに出資させることなく自分で行うと主張した。
 ごくまともな反論で、これに抗するのは難しいが、それも含めて感じるのは、過剰流動性のなか、世界でサブプライムローン的な無意味で害悪な金融テクニックが蔓延、金融マンの頭脳が詐術をそうと思わぬほど汚染されていることだ。(後略)

 

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