記事(一部抜粋):2008年7月掲載

経 済

野村インサイダー摘発の隠れた狙い

足利銀行買収めぐる疑惑に蓋するため?

(前略)この点について、ある野党議員から驚くべき情報が伝えられた。それによると、今回の野村証券社員によるインサイダー取引摘発は、足利銀行の野村証券グループへの不透明な売却の経緯から世間の目をそらすための隠れ蓑だというのだ。野党議員はこう解説する。
 「金融庁は3月14日、一時国有化中の足利銀行を、野村グループに譲渡することを決めたが、本来、漏れてはならない入札額が事前に野村グループに伝わったのではないかとの疑惑がもたれている。それに対する世論の批判の矛先をそらすために、今回の野村のインサイダー取引が浮上したのではないかと我々はみている。背景には、野村証券と渡辺喜美金融相との親密な関係があると思われる」
 本誌は5月号で、《「野村」と「金融相」の浅からぬ縁 「足利銀行」で蒸し返される15年前の醜聞》という記事で両者の関係について報じているが、その両者の関係を包み隠すために、今回のインサイダー取引の摘発が仕組まれたというのであれば、大問題と言わざるを得ない。
 5月号で伝えたように、足利銀行の買収合戦では、横浜銀行など地銀八行からなる地銀連合と野村陣営の2グループが最終選考に残った。当初、地銀連合が有利とみられていたが、蓋を開けてみると野村グループの提示した条件が地銀連合を上回ったとして、土壇場でひっくり返った。決め手となったのは株式譲渡額(買収額)で、野村グループは最終局面でライバルの地銀連合より100億円高い金額を提示したといわれている。この過程で野村グループ側へ地銀連合の買収額が漏れてたのではないかとの疑惑がもたれているのだ。
 また、疑惑の背景には、渡辺喜美の実父で元副総理の渡辺美智雄と野村証券の長年の関係があり、父から受け継いだ野村との浅からぬ縁が、渡辺の地元地銀の譲渡に際して野村グループ側に有利に働いたのではないかというのである。
 実は、この足利銀行の買収合戦で、野村グループを取り仕切ったのは、次期社長が内定していた当時副社長の渡部だった。機を見て敏な渡部は、関係者が多く足並みの揃わない地銀連合に対して、トップダウンによる機敏な交渉を展開したといわれる。その甲斐あって足利銀行を野村グループが落札した。(後略)

 

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