記事(一部抜粋):2008年6月掲載

政 治

自民も民主も党内暗闘が激化

先に辞めるのは福田か小沢か【永田町25時】

 あれほど国民に向かって叫び、与党を恫喝する道具に使っていた首相への問責決議案。その参院への提出を民主党が躊躇している。いわゆる憲法の3分の2条項を福田内閣が使ったのは、5月13日に衆院で再議決した揮発油税を今後10年間道路特定財源とする特例法で3回目。1回目の今年1月の新テロ対策特別措置法のときから「問責で対抗する」と言い続けているから、国民からみれば民主党は狼少年そのものだ。
 もちろん政治的な駆け引きはあろう。だが、民主党代表・小沢一郎に対し国民は軽侮の念を深くしていく。そうした国民感情を民主党議員の反小沢勢力が計算していることに小沢は気づいていない。加えて、与野党対決の重要法案をぎりぎりの段階で衆院再議決するという国会の慣例が定着すれば、民主党は参院の主導権を握りながら無力化していく。首相の福田康夫は衆院解散も総辞職もせずに来年の任期いっぱいまで居座れると勘違いするに違いない。
 小沢が問責を躊躇するのは、提出して審議全面拒否に突入しても、福田が解散しなければ国会空転に対する批判が民主党に向き、代表辞任につながると恐れるからだ。
 だが政治は本来権力闘争だ。福田の支持率が各種世論調査で20%を割り込むまで落ちている状況で、勝負できないとなれば代表としての威信は失墜、国民の期待は後退する。「勝負どころでいつも間違える小沢は、今度も政権獲りに失敗する」とベテラン政界ウオッチャーは皆思う。
 福田はこれまでの不安と焦燥の日々から脱し、内心ほくそ笑んでいるだろう。しかし内閣支持率向上につながる要素も見当たらない。世論調査での不支持の理由は「政策に期待がもてない」「実行力がない」が多数。国民は早く辞めてほしいと思い始めている。
 自民党議員にとって深刻なのは、自民党の支持率も急落していることだ。あと1年余りの間には必ず衆院解散・総選挙の時がくる。福田内閣のままでは選挙で惨敗するのは明らか。自民党内では、当然ながらポスト福田をめぐる暗闘が過熱している。あとは倒閣の火ぶたを切るタイミングだけ。支持率低迷の森喜朗内閣が参院選前に退陣を党内外から迫られたのと同じ状況だ。小泉純一郎が小池百合子を福田後継にかつぐかのような素振りをみせるのは、第一候補の麻生太郎が動き出すのを遅らせるための方策にすぎない。
 民主党でも九月の代表選を睨んだ暗闘が始まった。小沢が代表のままなら、福田政権が居直って来年まで続くかもしれない。その流れでは福田の支持率も落ちるが、小沢の支持率も落ちる。(後略)

 

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