記事(一部抜粋):2008年5月掲載

経 済

セブン‐イレブン・ジャパン【企業研究】

ピンハネ疑惑に司法のメス 最高裁が加盟店の上告を受理

 セブン‐イレブン商法の内実がついに白日の下にさらされることになるのか――。
 最高裁判所第2小法廷は3月28日、セブン‐イレブンのFC加盟店オーナーが自店の仕入れに関する請求書・領収書の移しを交付するよう本部に求めた訴訟を、受理する決定を下した。一審の東京地裁、二審の東京高裁はともにオーナー側の訴えを棄却する判決を下したが、最高裁は原告オーナーらの上告を受理、6月2日に口頭弁論を開く。
 最高裁で弁論が再開されるということは、下級審の決定が覆る可能性が高まったことを意味する。つまり、一審、二審が封印したコンビニ会計の闇に、司法のメスが入る可能性が出てきたのである。
 最高裁に上告していたのは、群馬県沼田市でセブン‐イレブン店舗を経営していた松井純氏と、さいたま市で同じくセブン‐イレブン店舗を経営する田代直人氏の二人。松井氏らは、店で売る商品の仕入れ単価が高いことに疑問を感じ、本当にセブン‐イレブン本部が示す通りの金額が、ベンダー(納入業者)に支払われているのかを確かめるため、ベンダーが発行し本部が保管しているはずの仕入れに関する請求書、領収書の写し、あるいはそれに代わる報告を求めている。
 今回の最高裁の決定が注目されるのは、加盟店主たちの間で根強く囁かれてきた「本部による仕入れ代金のピンハネ」疑惑について、その白黒がはっきりする公算が強まった点にある。
 セブン‐イレブンは全国に約1万2000の店舗網を擁し、日本で最大最強の小売店と評されている。仕入れ先に対するバイイングパワー(購買力)は強大で、その仕入れ単価は中小のスーパーやライバルのコンビニチェーンより安く、支払い条件なども優遇されている可能性が高い。現に、セブン‐イレブン・ジャパンの創業者で、同社やイトーヨーカ堂、デニーズなどを傘下におく「セブン&アイ・ホールディングス」の会長である鈴木敏文氏は、次のように発言している。
《(セブン‐イレブンは)圧倒的なシェアを持っているので仕入れ価格もほかより安くて当たり前で、(店頭での小売価格についても)下げられるものは下げる》(2007年1月8日付『日経流通新聞』)
 圧倒的なバイイングパワーゆえに、商品をライバルより安く仕入れることができ、店頭での小売価格も他より安くできるというわけだ。しかし実際に商品をベンダーから仕入れているオーナーに言わせると、鈴木氏の発言は「詭弁」以外のなにものでもないという。なぜなら、オーナーたちが実際に商品を仕入れる際の単価は、鈴木氏がいうような「安くて当たり前」ではなく、それとは正反対の「なんでこんなに高いの?」だからである。
たとえばナショナルブランドの日清食品「カップヌードル」。小麦価格が急騰する前の昨年時点のデータによれば、セブン‐イレブンの仕入れ価格は119円70銭(売価は150円)で、これは当時のスーパーの通常小売価格(98円前後)や100円ショップの小売価格(104円)より約2割も高い。つまりセブン‐イレブンの加盟店は、本部が推奨する仕入れ先からカップヌードルを仕入れるより、近所のスーパーから仕入れたほうが利鞘を稼げるということだ。
 仕入れ価格が高いのはカップヌードルだけではない。ビールやソフトドリンク、シャンプーなど、ディスカウントストアの小売価格よりも高いケースはいくつもある。素人目からすると、セブン‐イレブンが推奨するベンダーから仕入れる商品の単価は明らかに高いのである。
そえゆえ、オーナーの中には本部のピンハネを疑う者もいる。「本部がベンダーに実際に支払っている仕入れ代金と、本部が加盟店に示している代金には乖離があり、その差額を本部がピンハネしているのではないか」というのだ。(後略)

 

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