記事(一部抜粋):2008年5月掲載

政 治

「福田と小沢の共倒れは必至」も

微妙に違う小泉と安倍の思惑【永田町25時】

 亡命先のインドから米国に向かう途中、日本に立ち寄ったダライ・ラマ14世と会談したのは、政治家では自民党の太田誠一だけ。もう1人は安倍晋三夫人の昭恵だった。これが官邸の福田康夫周辺に極めて不評。
「安倍本人が会うならまだしも、アッキーのタレント気取りは不愉快」
 官房長官の町村信孝は親しい記者にそう漏らした。
 マスコミ報道が昭恵に集中し、安倍の国民人気がいまだ高いかのような幻想をふりまいたが、福田周辺にいわせれば、政権を放り出した安倍は自民党を窮地に陥れた戦犯で、まだ禊が済んでいない。福田政権の苦労の種は、年金にしろ道路財源にしろ、小泉、安倍政権の尻拭い。まして元来が嫉妬深い国会議員に、昭恵の行動が面白かろうはずがない。夫人のパフォーマンスを許して敵をつくった安倍は、相変わらず政治音痴と言わねばならない。
 昭恵の不評には政局的な背景もある。4月に入ってから安倍の動きが露骨なのだ。麻生太郎や中川昭一、甘利明らと連絡を取り合う機会が増え、相談役として復帰した町村派の若手を引っ張り出しては会合を重ねる。目的はみえみえで、ポスト福田へ向けての麻生政権の準備。見ようによっては福田引きずり下ろしだ。福田周辺が舌打ちするのもわからないではない。安倍は妙に興奮ぎみで、それが自民党内に波紋を広げている。
 もう1人波紋を広げている男がいる。国民人気が相変わらず高い小泉純一郎。「そろそろ何とか風(解散風)が吹き始めた」と放言したり、小泉チルドレンの応援に出かけて演説したり、蟄居状態を脱して動き始めた。小池百合子や前原誠司と会合したことをマスコミは「小泉新党の布石」「政界再編の動き」などと報道したが、小泉の本当の狙いは、安倍とは逆で福田政権の当面維持。安倍、麻生らのポスト福田の動きが本格化しないように牽制しているのだ。
 逆方向に動いている安倍、小泉の2人だが、表に出ていない共通認識がある。4月に入って自民党議員の多くも思い始めた。それは福田のクビをとるなら小沢一郎のクビもとる。共倒れ、もしくは痛み分け。「民主党が首相問責決議を参院で成立させ、国会が全面空転に突入するならそれでもいい。福田が先か小沢が先か、どちらが先に辞めるかの勝負」(町村派長老参院議員)というのだ。(後略)

 

※バックナンバーは1冊1,100円(税別)にてご注文承ります。 本サイトの他、オンライン書店Fujisan.co.jpからもご注文いただけます。
記事検索

【記事一覧へ】