記事(一部抜粋):2008年4月掲載

社会・文化

アイビーダイワ「粉飾」の動かぬ証拠

「食品事業」で売り上げを偽装

(前略)
 そうした中、アイビーダイワが2003年に新規事業として始めたのが、米や野菜の販売という「食品事業」。唐突に始めたこの事業は、初年度から実績をあげ、直近の07年3月期まで同社の中核事業と位置づけられてきた。ところが、この食品事業の売り上げの大半が、実需を伴わない架空の取引によるものだった。アイビーダイワの関係者が証言する。
「本業の繊維事業がじり貧で、2002年3月期は10億円の売り上げを確保するのがやっとの状況。しかも経常損益は3億7000万円の赤字と惨憺たる決算でした。このままでは上場を維持できないと危機感を抱いた当時の経営陣は、利益はともかく、せめて売上高だけでも増やして上場企業らしく取り繕おうと、食品事業で売り上げをつくることを計画した。米や野菜を仕入れ、それを業者に転売するというものでしたが、アイビーダイワが実際に行ったのは、ライスカンパニーという大阪の米穀卸会社に2億円ほどを年利六6%で融資し、その利息(約1200万円)を受け取るという金融業でした」
 アイビーダイワは表向き、ライスカンパニーから米を仕入れて代金を同社に支払う。そして仕入れた米をライスカンパニーの兄弟会社である上越米匠に転売したことにして、それを食品事業の売り上げとした。もっとも商品(米)は一切動かず、帳簿上、売買が行われたように装うだけの偽装取引だった。
 これにより、03年3月期のアイビーダイワの売上高は前年度の10億円から一気に27億1800万円へと急増。本業の繊維事業は4億2500万円、残りの約23億円が「その他の事業」の売り上げで、うち16億円弱が食品事業によるものだった。
こうしてアイビーダイワの食品事業は、初年度からいきなり同社の中核事業となり、事情を知らない多くの投資家は、会社側の公表数字をみて、新規事業への進出が成功裏に滑り出したと勘違いさせられることになった。この偽装取引は07年1月まで続けられた。
 ライスカンパニーの上田裕雄社長はこう明かす。
「03年当時のアイビーダイワの社長は伊藤博夫氏。エース証券の役員を務めた人物ですが、その伊藤氏から、上場を維持するための売り上げづくりに協力してほしいと持ちかけられました。相手は一応、上場会社ですし、見返りとして新しい取引先も紹介してくれるという話だったので協力することにした。しかし実態は、金銭消費貸借契約でした」
 食品事業としての実態がないにもかかわらず、それがあるかのように有価証券報告書に記載し続けてきたのが事実なら、明らかに「虚偽記載」である。アイビーダイワは本誌の取材申し入れに対し、「取材は一切受けないことにしている」と上場会社とは思えぬ対応に終始しているが、食品事業の実態が「融資」であることは、実は同社自身が公に認めていることでもあるのだ。(後略)

 

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