元首相の小泉純一郎が政局を睨んで本格的に動き始めた。前号で、1月下旬に元首相の細川護煕と極秘に会談していたことを明らかにしたが、その後も、2月22日に東京・八王子で報道陣を前に昨年7月の参院選以来初めて講演。3月11日には自民党選対委員長の古賀誠、元幹事長の武部勤、総務会長の二階俊博と料亭で会談した。さらに石垣島に出かけてバイオ燃料開発を奨励したり、静岡7区の片山さつきの応援に駆けつけたりと、政治活動休止を宣言していた昨年とは大きな変わりようだ。
「政局の小泉」を自称する元首相が無目的に動くことはありえない。狙いは福田政権の延命だ。
福田政権は低空飛行を続けている。新聞各紙の世論調査では支持率が30%を割り込んだ。そうした中で道路特定財源である揮発油税の暫定税率をめぐる与野党攻防は、4月危機に向かって一直線に進んでいる。
衆参両院の議長斡旋が不発なら、4月にガソリンの値段は1リットル25円下がる。それを元に戻して財源を確保するために、60日規定を使って歳入法案を衆院で再議決すれば、福田に対する問責決議案が参院に提出され、民主党などの多数で可決される。
「憲法では問責が可決されても効力はない。だが問責を可決した内閣の提出法案を審議すれば参院の存在意義が問われる。国会は全面ストップだ」(自民党国対幹部)
福田のとる道は総辞職か衆院解散しかない。だが、「支持率低迷の福田内閣の下での解散はしない」というのが自民党と公明党の暗黙の約束だ。したがって福田は退陣。後釜は現在の情勢では麻生太郎。小泉が動き出したのはそうした事態を避けるためである。八王子の講演で小泉は、道路財源で民主党と妥協するよう福田に呼びかけた。「総理が法案を修正すると言えば、自民党の中に怒る人がいるだろうが、民主党は、まあ仕方がないということになる」。
だが、福田はリーダーシップを発揮できずにいる。麻生サイドからみれば政権獲得の絶好の機会。事実、麻生は「はしゃぎ過ぎ」(ベテラン記者)と揶揄されるほど活発に動いている。(後略)