記事(一部抜粋):2008年3月掲載

経 済

増殖を始めた不良債権

「金融危機前夜」の様相【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)
B まずは信用組合だろう。信組の上部組織である全国信用組合連合会が資本支援制度を複数の信用組合に発動する。もちろん支援制度を受けるだけの事情があるわけだ。たとえば大東京信用組合。同信組は昨年、東京建設業信組を吸収合併したが、東京建設業信組は昨年初めの時点でペイオフ第1号と目されていた。
C 同信組は不良債権比率がきわめて高いだけではなく、店舗が1つだけで、預金量が少ない。煩雑な処理作業が強いられるペイオフも可能な規模だったので、ペイオフ対象には格好と見られたんだ。しかし大東京信組が救済した。
B 救済はしたが、東京建設業信組の不良債権はそのまま。だから資本支援という話になったわけだ。
A 東京都内だけをみても、相当規模の不良債権を抱え込んだ信用組合は少なくない。むろん貸倒引当金は積んでいるわけだが、不稼動資産を抱え込んだままだと、経営の健全性は時が経つに従って損なわれる。引当処理では足りなくなって最終処理となれば、金融機関には新たな損失が発生し、赤字になって資本を食う。だから最終処理ができずに内部に抱え込んだままになっている。
B 東京は地方に比べれば景気はまだまし。にもかかわらず経営状況が芳しくないということは、経営地盤を失っているということだろう。最終的には、そのような信組を存続させるかどうかという問題になる。金融庁の考え方次第だが、現実には政治力が働く。だから、これまでも抜本的な処理ができなかった。
C しかし、この先はどうかな。景気の好転で勢いをつけていたところで、再び景気が悪化しだした。不動産価格も下げている。担保評価が下がって引当金をさらに積み増さなければならなくなる。それに堪えられるとは思えない。
A 信組に限らず首都圏の中小金融機関は、景気好転というより、地価の底打ち、反転上昇で担保評価が上がったことで不良債権を減らすことができたという経緯がある。それが逆回転すれば、やはり不良債権は増えるしかない。
B 竹中平蔵氏が金融担当大臣だったとき、大手銀行には厳しく、地銀以下には甘い行政を行った。いわゆる竹中政策だ。地銀以下はリレーションシップバンキングと称して、不良債権の最終処理を強制せず、むしろ、じっくりと融資先企業を支援せよということをやった。地銀以下に、大手銀行と同じような厳しい不良債権処理を強要すると、経営が著しく悪化して、破綻する金融機関が続出しかねなかったからだ。
C そうしているうちに幸運にも地価が上昇したので、政策効果があがったようにみえた。その竹中マジックが底割れしたわけだ。
A 結局のところ、竹中政策はインフレが起きないと成果が出ない。だから竹中氏は日銀に量的緩和を求め続けて、金利を下げろと主張している。竹中氏らしく、あれやこれや専門用語を並べ立てるが、所詮は単純なインフレ主義者だ。
B おかげで首都圏の銀行は見映えがよくなったが、そのメッキがはげ始めたわけだ。安い塗装で、実態は何もよくなっていなかったことが歴然としてきた。信金、信組はこれからさらに大変な局面を迎える。
C 第二地銀も深刻だろう。やはり地元の土建、建設、金融の3業種の経営悪化が響いている。
A 金融業は、貸金業法改正に伴って、消費者金融のみならず、地方型の信販会社も経営をガタガタにされた。この先、破綻するケースが続出するだろう。その信販会社に融資しているのは、地元の地銀、第二地銀クラスだ。(後略)

 

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