連 載
【狙われるシルバー世代】山岡俊介
暗躍する「新田グループ」の残党「乗っ取り集団」の跋扈を許すな
(前略)すずしろの郷を運営していたのは「杏稜会」という医療法人社団。98年4月に設立され、2000年1月にすずしろの郷をオープンした。しかし開業当初から稼働率は低迷。赤字決算が続き、資金繰りに苦しんでいた。
そうした中で「病院乗っ取りグループ」が介入。介護報酬を借金の担保に取られ、経営の実権を奪われてしまう。その結果、内紛が起き、実に理事長が50回以上も交代するなど施設の経営は混乱を極めた
(中略)
要するに、すずしろの郷に介入した一派の背後には、新田グループの影がちらついているのだ。
すずしろの郷が、介護報酬を担保に資金を借り入れたことでその筋の介入を許したのは前述したとおりだが、その原型となる診療報酬を担保にした貸金業を、わが国で最初に始めたのが、新田グループ代表の新田修士氏といわれている。
このグループの手口は、返済が滞ると担保に取った介護報酬や診療報酬債権をちらつかせて経営に介入、最後には手形を乱発し、それを換金して自分たちだけ大儲けし、用なしとなった病院は倒産させる、というもの。彼らの背後には広域暴力団「山口組」の影も見え隠れする。
もっとも、新田氏自身は「寿光会」(東京都青梅市)と「浄和会」(大阪市)の両医療法人社団の乗っ取りにからんで業務上横領罪(懲役八年)に問われ、1年ほど前に収監されている。とはいえ、新田氏のノウハウを学んだ者たちが、現在も塀の外で暗躍を続けており、S氏もその1人といわれる。
ところで、新田グループの傘下に取り込まれた佐和会は、東京都中央区の雑居ビルの一室にあることになっているのだが、そこには佐和会の表示はなく、別のある企業が入居している。
その企業の代表者は山口組系の元組員。昨今、経営不振の上場企業が不透明な増資によって資金を調達するケースが増えているが、この元組員はそうした企業に度々介入してきた。株価操作や利益供与などの犯罪に関与している可能性もあるとして、警視庁はこの元組員の行方を追っている。
すずしろの郷の破綻を伝えるマスコミ報道は、背後にこうした闇人脈が深く介入していた事実を一切指摘していない。しかし、以上みてきたように、介護老人保健施設を食いものにする一派は、間違いなく存在するのだ。(後略)