記事(一部抜粋):2008年2月掲載

経 済

ポスト福井は「武藤」で決着

日銀人事の焦点は「副総裁」【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)
C 総裁候補の最有力とされる武藤敏郎副総裁は、財務事務次官経験者ということで、今のところ民主党は財政・金融の分離という立場から表向き反対している。
A しかし財務省は、自分たちのOBを何とかして総裁にしたい。
C そう。武藤総裁が実現しないと、財務省は大きな天下りポストを失うだけではなく、天下り禁止の趨勢に勢いを与えかねないと心配している。つまり日銀のためというより、財務省のために武藤総裁実現に意欲を燃やしている。実に厄介な話だ。
A しかし、財務省は相変わらず権謀術数というか、裏で画策するのが巧みだ。植田和男東大教授などの名前が噂レベルで日銀総裁候補として上がっている。確かに植田氏は日銀審議委員を務めた経歴もあり、有力な人材かもしれない。しかしその噂を流しているのは、どうやら財務省だ。「財務省が熱心でね」と他省庁の幹部が苦笑いしていた。
B 植田氏が日銀総裁を引き受けることはないと踏んだうえで、噂をわざと流しているんだろう。
A おそらくね。植田氏が最後は固辞し、結局、武藤氏しかいないというムードをつくろうとしているんだと思う。
C 試合巧者といえばそうかもしれないが、なんだか不毛だね。
A しかも財務省の動きはそれで終わりとはならないから大したものだ。武藤総裁実現のための最大の障害は民主党の小沢一郎代表だ。小沢氏は官庁経験者の天下りは認めないと言い続けている。そこで財務省は、小沢氏の盟友である斎藤次郎・元大蔵事務次官を根回しに使っているという情報がある。
C 斎藤氏といえば、小沢氏が率いた新生党が与党になったときに小沢氏に接近、そのため自民党の怒りをかい、自民党が政権を取り戻すと一転、冷や飯を食わされたという人物だ。大物次官と言われながら、結局、有力な天下りポストには就けない状態が続いている。
B その斎藤氏を小沢篭絡のために動かしているというわけか。自民党が知ったら、新たな怒りが爆発しかねない気もするけど(笑)。
C いや、もう昔の話ということになっているかもしれない。しかも、小沢篭絡の効果があるかどうかも分からないし。
A 福井俊彦日銀総裁は「政策の継続性が重要」という言い方で、暗に武藤氏の総裁昇格が好ましいという見解を示している。ホンネはどうなんだろう。
B あれはホンネだ。福井総裁としては、インフレターゲットによる量的緩和政策の導入は今後とも阻止したい。その点、武藤氏は最も安心できる後継者だ。武藤氏は副総裁として、日銀の中でも一定の存在感を築いているしね。
C その意味では、福井氏が最も後継になってほしくないのは竹中平蔵氏だろう。ゴリゴリのインフレターゲット論者だ。
A 竹中氏は、おくびにも出さないようにしているが、内心では日銀総裁になりたくてしょうがないらしい。しかし、自民党の推薦は期待できても、民主党は絶対に反対だろう。ねじれ国会が実現して最もがっくりしたのは竹中氏、という話があるほどだ。しかし、まだ諦めきれないのか、ここにきて再び金融政策に口を挟み始めた。
C 存在をアピールしているんだろう。諦めが悪いね(笑)。
B 竹中氏の可能性はないと思う。はっきり言って、もう終わった人だから。おとなしく大学の先生をやっていたほうがいい。
C 民主党は榊原英資・元財務官を候補として考えているという話もあったけど、どうなんだろう。民主党と榊原氏との関係からすると、ありえないことではないと思うけど。
A 確かにありえる話だ。しかし、榊原氏では自民党の承認を得るのが難しい。あれだけ露骨に民主党寄りの姿勢を見せてしまってはね。
B そういえば、三菱UFJグループの三木繁光会長の名前も流れていたね。
C 過去に三菱銀行の頭取経験者が日銀総裁になったことはある。その再現ということだが、どうだろう。「本人はやる気だ」という人もいる。
A 三菱UFJグループは1月、三菱東京UFJ銀行の頭取人事を従来より早く決定し、発表した。畔柳信雄頭取が会長となり、後任頭取には永易克典副頭取が昇格する。今年は経営統合後の最大イベントであるシステム統合を控えている。そのために頭取人事を早めたという話になっているが、一方で、三木氏が会長を降りて相談役に退く人事も決定した。しかも4月1日付だ。これはなかなかおもしろい。
B おもしろいね。会長と違って、相談役ならいつでも退くことができる。仮に日銀総裁の就任要請があったとしても、何ら困ることはない。準備万端という感じだ。(後略)

 

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