記事(一部抜粋):2008年1月掲載

社会・文化

沖縄利権を巡る「久間VS守屋」の真相

08年早々「防衛省事件・政界ルート」が弾ける

 防衛省のドンとまで呼ばれた大物事務次官の守屋(武昌)を逮捕したんだから検察も十分に満足だろう――。
 政界からこんな声があがるようになった。
「政界ルート」となれば間違いなく防衛相経験者がターゲットとなるだけに、年金問題を始め失点続きの自民党は、早く検察に幕を引いてもらいたいのである。年末は、終結のタイミングにふさわしい。
 しかし、政治家の責任追及は、山田洋行事件に着手する前からの既定路線であり、検察の徹底解明の姿勢に変化はない。「防衛省の装備品調達や防衛施設絡みの工事に、政治家が口利きをすることは常識だし、今回の捜査でその証言も得られている。ここでやめてはならないし、長い間、政治家をその職責において摘発していない検察は、捜査現場の長い八木宏幸特捜部長に、政界への切り込みを託している」(検察OB)
 その際、真っ先に久間章生元防衛相の名があがるのは、防衛族として頭角を現してきた久間氏と「ドン」である守屋元次官との仲が、事件展開する前から徹底的に悪く、逮捕後、守屋容疑者とその盟友とでもいうべき山田洋行の宮崎元伸元専務が、取り調べ検事の求めに応じ、「久間利権」を話しているのではないかと推測されるからだ。
「久間利権」とは何か。
 防衛省関係者が解説する。
「久間先生は、清濁併せ呑む昔ながらの政治家で、誰の陳情でも受けてしまう。それが久間先生の持ち味だが、その分、脇が甘くなる。沖縄には米軍再編絡みの予算がたくさんついていて、沖縄経済を支えている。中心は振興事業のインフラ整備や地域活性化のハコ物。防衛族の久間先生が仕切っているものも少なくない」
 地域振興のための政治活動と利権とは紙一重である。その政治活動に、業者からの献金を受けたいという思惑があり、「口利き」が職務に絡むものであれば、贈収賄事件となる可能性がある。
 もちろん政治家はそんな危うさは百も承知だから、現役時代に不用意にカネを受け取ることはない。「現役」とは、例えば防衛省なら大臣、副大臣、政務官、衆参両院の外交防衛委員会委員長など職務権限がハッキリしているポストに就いている時だ。
 県議出身で長い政界歴の久間氏は、そんな事情は承知していると思うのだが、ゼネコンや沖縄の建設業界から陳情を受けると断れない。
 それゆえ守屋元次官と衝突した。
 普天間基地の移設には長い歴史があり、米国との間で「移設合意」に達したのは故橋本龍太郎政権下の1996年4月だった。その時、移設候補地となったのが名護市辺野古沖で、当時、3つの工法が検討された。
 1、ポンツーン(箱)工法
 2、セミサブ(半潜水)工法
 3、浮体桟橋工法
 海上工法となったのは、騒音を少なくして環境を破壊しないためだったが、これに対して地元建設業界は猛反発する。海上工法の場合、関与するのは鉄鋼、造船、マリコン業者で沖縄に工事は回ってこない。だから地元は埋立工法で巻き返しを図った。
 それもあって、辺野古の沿岸部に、周辺住宅地を飛行ルートから外すためにV字に2本の滑走路をつくるV字型案で決着するまでには長い時間を要した。最終的に決定、日米で基本合意するのは2006年4月で、小泉純一郎元首相(肩書きは当時、以下同)、飯島勲首相秘書官、額賀福志郎防衛庁長官、守屋事務次官のラインで決まった。
 ここに至るまでに、名護市を中心に00年度から10年間で1000億円もの「北部振興策」が予算化されるなど、移設予定地は潤った。さらに基地絡みで北部に投下される一般的な予算もあり、年平均200億円が「ヤンバル」と呼ばれる北部に注ぎ込まれ、名護市周辺は「特需」に沸いた。(後略)

 

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