記事(一部抜粋):2008年1月掲載

経 済

強まる「官製不況」の様相

2008年は大波乱の年に【金融ジャーナリスト匿名座談会】

(前略)
A 1月から2月にかけて、シティ以外の外銀も次々に決算を発表する。その過程で、もしかすると経営破綻が起きるのではないか。欧州系の中堅銀行クラスは、いつ倒産してもおかしくない状況にある。
C おそらく破綻する銀行があるだろう。問題視されている銀行は4半期決算を出していない。だからこれまでは、サブプライム問題の傷がどの程度深刻なのかが分からなかった。それがいよいよ明らかになるわけだからね。
B 欧州系の銀行の中には、近年、急成長、急拡大したところがある。それらの銀行は預金は集めずにマーケットから資金調達し、証券化資産を買ったり、不動産融資をしてきた。しかし今は、マーケットからの資金調達が困難な状況になっている。
C 今度の決算発表を辛うじて乗り切ったとしても、次はないという感じかな。
A ドイツや英国の銀行が深刻だという話は伝わってきているが、実はそれだけではない。混乱は欧州全土に拡大している。たとえばスペインも大変なことになっている。経済は悪化、不動産価格は暴落し、銀行の経営も深刻だ。スペインの巨大銀行が破綻したら、その影響は中南米へと波及する。世界的な騒ぎへと発展するだろう。
B そうなったら、もはや金融恐慌だ。しかし日本では、そうした実情がなかなか分からない。
C 邦銀はサブプライム関連の投資は少なく、それゆえに傷は浅いという話になっている。しかし、これは「定義」の問題だ。確かにサブプライム関連は少ないが、証券化資産への投資という定義でいえば、各メガバンクとも資産残高は数兆円あるはずだ。問題がサブプライム関連限定から、証券化資産全体へと発展していると考えれば、邦銀も傷は決して浅くない。
B しかし邦銀にとっては、国内要因のほうが深刻だろう。景気は完全に冷え込み始めた。
C たしかにそうだ。かなりの速度で景気は悪化している。中小零細企業の倒産は08年にはもっと増えるだろう。自己破産も急増するのは避けられない。
B 貸金業法改正の影響は絶大だったね。借金できない人たちが急増している。
A 一方で過払い利息返還請求は依然として収まらず、不良債権の増加と相まって、消費者金融会社や事業金融会社の倒産が相次ぐだろう。消費者金融会社は大手すら危うくなる。
C 信販会社も大変だ。割賦販売法の改正で経営は厳しくなる一方。淘汰は避けられない。全国的に信販会社の倒産が相次いでも決しておかしくない状況だ。
A 建築基準法の改正が原因の中小建築業者の倒産も増加の一途だ。不動産市場の悪化で不動産業者の倒産が増えるのも確実だろう。
B 消費者保護が重要なのは間違いないが、それを振りかざして自己アピールする官僚たちの動きはやはり問題だ。結局、事業者の倒産を加速させている。
C 民衰えて官栄えるだよ。金融庁も経済産業省も、実はやるべき仕事が減ってきている。しかし仕事がないと、自分たちの存在が危うくなる。そこで自己保全のためにやたらと動きまわる。民営化や、官僚制度の改革、天下り禁止など逆風が吹く中で、「民ではダメ。民は悪い。だから官は重要」というイメージをつくるのに躍起になっている。役人たちがつくり上げる「反・民営化不況」「官製不況」といってもいい。
A 地方銀行などは、地方経済が悪化しているうえに、日銀の利上げを見込んで金利上昇のリスクヘッジをやってきた。しかし利上げはなくて市場金利は逆に低下。ヘッジは空振りに終わって、ヘッジコストが高くつき始めている。08年3月期決算では、そうしたことからも減益幅が大きくなっていくだろう。(後略)

 

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