B 前号で取り上げた「反社会的勢力の排除」が本格化しはじめたようだね。
C 金融庁、銀行界証券界など官民が連携し、ヤミ勢力を排除する姿勢を打ち出してきた。
A 11月11日に放送されたNHKの「ヤクザマネー〜社会を蝕む闇の資金〜」という番組も、当局のその姿勢を前面に出した番組だった。
B かなりの数の新興企業が、ヤクザマネーに頼る姿を映しだしていた。だけど、覆面とはいえ、「ヤクザマネーを80億円動かす男」がTV画面に出るのは、組織としてはマズイんじゃないの?
C 勝手にマスコミに出れるはずがないから、上部組織がそれを認めたということ。だから、何らかの意図があると思った方が良い。そもそも、「一丁あがり」の金融ブローカー、大場武生を「ゼクーを食った男」として取り上げていたけど、今ごろになってフォーカスすることに何の意味があるのか。
A 大場が、5年前に行った東証2部上場の建設会社「大盛工業」株をめぐる風説の流布で逮捕されたのが、時効1カ月前の10月11日。つまり、「ヤクザマネー」の放送日は、大場が逮捕されなければ、時効となる日だったんだ。
B NHKに何らかの意図があったってこと?
C NHKじゃなくて、マスコミを利用している奴らがいるということ。たとえば昔、こんなことがあった。知人の証券マンが外資系の証券マンの紹介で、新興企業A社の社長に会った。そこで社長に「幹事証券に入れてあげてもいいよ」と言われたという。
B 上場企業だったわけだ。それでどうしたの?
C その「うますぎる話」を聞いた僕が企業調査してみたら、出てくるわ、出てくるわ……。
A キナ臭い話がでしょ。A社は当時、その後倒産したコンビニ会社のオーナーとの不明朗な資金流入と、マル暴との関係が噂になっていた。
C それで幹事証券の件は断ったんだけど、この話はまだ続く。今度は知人の記者が経済部に配属になった。そして「何か企業ネタはない?」などと言うものだから、「A社がアピールしたがっているので、何かネタをくれるかも知れないよ」と言ってしまった。
B それでネタをもらったの?
C ガセネタをね。鳴り物入りで海外から第三者割当増資を受けるという話だった。日経にも発表されたけど、その増資が実行されることはなかった。
B 大場や西田晴夫らが株価操縦に使った風説の流布のハシリだったわけだ。
A 僕もその怪文書を手に入れた。それでビックリしたのは、その記者の動きが詳細に書かれていたこと。これはA社しか知り得ない内容だった。要はA社は記者を情報操作に利用しようとしていたということ。
B だからNHKも気を付けなければならないということか。
A 「何らかの意図」という観点からすると、一番考えられるのは、新興企業の株価を下げること。ヘッジファンドの連中は、サブプライム・ローンの損害を取り戻すのに必死で、ネット証券から新興企業の株を借りて売り崩したり、買い戻したりして値ザヤを取っている。
B たしかに、新興企業株のほとんどは、NHKの放送とNYダウの下落と相まって12日が安値となって翌日から反発しだした。そういう風に見ると、NHKの放送は、ヘッジファンドの買い戻しに貢献したといえなくもない。
A そもそも、サブプライム・ローン問題をネタに、上げ下げで儲けている奴がいるんじゃないだろうか。
B そう言えば、9月中旬にサブプライム・ローンの焦げ付き問題で一時、取り付け騒ぎになった住宅金融専門の英中堅銀行ノーザン・ロックだけど、預金を解約した顧客から徴収した解約手数料は総額1億ポンド(約235億円)超と、まさに焼け太りだった。(後略)