「大目標は単独過半数だが、それは非常に厳しい目標だ。野党で過半数が次善の策で、三善の策は衆院で第一党を目指すことだ」
与党との大連立に失敗した民主党代表の小沢一郎が11月13日の会見で奇妙なことを言った。わずか1週間ほど前、辞任表明を撤回するにあたり「次期衆院選に向け全身全霊で政権獲得を目指す」と誓ったばかりなのに、民主党単独政権を事実上あきらめているといわんばかりの発言だ。
たしかに現状113議席の民主党を過半数の241議席にするには倍増でも足りない、至難の業だ。だが、まだ衆院解散も不確定な段階で、野党党首がわざわざ過半数は難しいから次善、三善も考えていると言及するのはおかしい。別の意図が隠されていると受け止めなければなるまい。
単独過半数を事実上あきらめた小沢は政権を獲るためにどうするか。方策は限られている。まずは国民新党や社民党との連立だが、これは恐らく数が足りない。次は共産党と組むことだが、理念と政策があまりに違い過ぎて不可能。公明党が数はちょうどいいものの、衆院選で自民党と選挙協力をした直後に自民と手を切るのは無理。残るのは、自民、公明との大連立ということになる。
実はこれしか答えはない。つまり小沢のいう三善の「第一党」というのは、選挙結果によっては大連立を再度目指すという宣言と同義なのだ。大連立に反対した幹事長の鳩山由紀夫も衆院選後の大連立なら容認するという。一度ご破算になった大連立は依然として生きている。
なぜ小沢はそれほど執着するのか。これには理由がある。大連立を仕掛けた面々、日本の政界に巣くう妖怪のような旧勢力はしぶとい。森喜朗、古賀誠、山崎拓、二階俊博、加藤紘一。彼らは7月29日の参院選挙の前から自民党惨敗を前提に動いてきた。目的は安倍政権の退陣に伴う福田政権の樹立。福田に託す役割は、小泉改革でぶっ壊された昔の自民党の復活。具体的には、小沢と福田の首脳会談で相談した選挙制度改革。派閥が力を取り戻す定数三人から5人程度の中選挙区制度への回帰だ。もちろん小選挙区制では限られた選挙区でしか当選できない公明党・創価学会にも異存はない。
裏で取りまとめ役をかって出たのが、大勲位・中曽根康弘と常に二人三脚の読売新聞会長・渡邊恒雄。こうした面々が小沢にある重大な約束をした。だから小沢はあくまで大連立を目指す。(後略)