(前略)
「国民のカネが詐取されている以上、いずれかの業者に責任を取ってもらい、業界の体質を変えさせねばならない。その対象が、業界大手で知名度も高く、しかも悪質だったコムスンとなるのは当然でしょう。先行捜査の警視庁を中心に幾つかの県警との合同捜査という形になると思う」(警察庁関係者)
ネックは、不正受給でコムスンの会社責任は問えても、折口会長の経営責任にまで発展しない可能性があることだ。実際、細かな実務は現場に任され、「不正請求をしろ」という指示が本部から出されるわけではないから、折口会長の刑事責任は問いにくい。
(中略)だが、グッドウィル・グループで問題になっているのはコムスンの不正受給だけではない。クリスタル買収におけるさまざまな疑惑が、時間とともに噴出、証券監視委の調査は既に始まっており、特捜部との合同捜査になりそうだ。その先には、巨額資金の移動が絡むだけに国税当局も関心を寄せている。
グッドウィルのクリスタル買収に絡む疑惑をおさらいしてみよう。
第1に、インサイダー取引疑惑である。グッドウィルがIR(投資家向け広報)で「クリスタル買収」を発表したのは、昨年11月18日だった。ところが実際に買収したのは10月31日で、約2週間(市場では12営業日)、買収の事実が伏せられていたことになる。折口会長はその理由を、「買収にあたって、しばらくグッドウィルの名を出せなかったから」と説明した。
その当否はともかく、グッドウィル株は11月1日以降、出来高を伴って急騰、6万7700円(10月31日終値)が7万7600円(11月17日終値)と、15%近くも値上がりした。発表の翌営業日の11月20日以降は連日のストップ高。11月28日の終値は10万4000円を記録、インサイダー情報で仕込みを終えた勢力は、この相場で大儲けしたことになる。
第2に、この買収になぜ2つのファンドが用いられたかである。グッドウィルはまず10月31日、「人材サービスファンド」に883億円の出資を行った。次にこのファンドが全額を「コリンシアンファンド」に投資した。出資比率は74.5%で、残り303億円(25.5%)は別の投資家である。
不可解なのは、クリスタルのオーナーである林純一氏に支払われた買収資金が50億円であること。1186億円も集めた「コリンシアンファンド」は、686億円もの余剰資金を残してクリスタル株の九割を支配、グッドウィルはその出資割合から約67%を握って、傘下に収めた。売上高約5000億円で経常利益が400億円近い巨大企業グループが、883億円で手に入ったから安いといえるのかも知れないが、グッドウィル以外の投資家が「濡れ手に粟」で手にした利益を考えれば、「何か別の目的があったのではないか」と思えてならない。
第3の疑惑はそれにつながるもので、「グッドウィルから投資家への利益供与があったのではないか」というものだ。「そこにはこんな現実がある」というのは、折口会長と親しい証券関係者である。
「折口会長の取り巻きのなかに、昨年暮れから今年にかけて、急速にカネ回りがよくなった連中がいる。挌闘界で著名なMやその友人の若手経営者のAなど。彼らは出資者の人選、割当などに『汗』をかき、クリスタル買収が思ったよりうまくいったので、巨額のグッドウィルマネーを手にした。その一部はMが世話になっている山口組有力組織にも流れたようだ」(後略)