記事(一部抜粋):2007年10月掲載

経 済

「みずほ」に燻る巨額損失「塩漬け説」

オルタナティブ投資が裏目に

(前略)そうした中、「みずほ証券はサブプライムローン絡みの投資で巨額なエクスポージャーを抱え、相当の含み損を抱えているらしい」との憶測が市場を駆け巡った。
 みずほは、昨年末に米連邦準備制度理事会(FRB)から、金融持ち株会社の設立を認可され、株式(ADR)をニューヨーク証券取引所に上場した。これは米国マーケットで投資銀行業務を本格的に展開する布石であり、現にみずほは、現地での中途採用を含む陣容の拡大を急ピッチで進めている。その一環として、みずほコーポレート銀行は今年4月、子会社のみずほ証券と共同で機関投資家向けのオルタナティブ(代替)資産運用会社「みずほオルタナティブインベストメンツ」を、ニューヨークに設立した。
 オルタナティブ投資とは、伝統的な株式や債券による運用リターンとの相関が低く、リスクをマネージしつつ絶対収益を目指す投資手法で、株式や債券のほか、ABS(資産担保証券)などのストラクチャード証券(仕組み証券)、ヘッジファンド、プライベートエクイティ、不動産などを高度に組み合わせて運用するスキームを指す。
 欧米系の金融機関は、グローバルベースでのオルタナティブ運用を積極的に展開しているが、邦銀として運用専門子会社を立ち上げて本格進出したのは、みずほコーポレート銀行が初めてだ。
 みずほはすでに、資産運用会社「みずほインベストメントマネジメントUK」を06年7月、ロンドンに設立しており、4月のニューヨークに続いて、日本でもオルタナティブ運用会社を設立する予定。欧米日の3極体制を構築し、連携して機関投資家向け資産運用ビジネスを展開するという目論見だ。
 このようにして、みずほが、数百兆円市場といわれ急速に拡大を続けるオルタナティブ市場に名乗りを上げたまではよかった。しかし大きな誤算が生じた。
 まず、陣容整備のために、フランスの投資銀行カリヨンから証券化のプロ集団を引き抜いたのだが、このトレードに対し、みずほ証券が今年3月、カリヨン側から7億5000万ドル(約860億円)という巨額の損害賠償請求を起こされた。
 カリヨンの訴状によると、同社の上級幹部二人を含むスタッフ11人が昨年12月8日に突然退社し、同日、みずほ証券への就職に同意した。上級幹部2人はカリヨンの企業秘密に関わる情報を把握しており、配下の社員を伴って退社した後、その情報を基に、カリヨンがCDO(債務担保証券)関連業務について交渉を行っていた企業に割り込んだ。
 こうした人材の引き抜きをはじめとするみずほの「倫理に反する計画」により、カリヨンのCDO関連業務はもはや機能せず、カリヨンの評価を傷つけたとして、懲罰的損害賠償を含む提訴に踏み切ったのだという。
 しかし、この人材の引き抜きは、その後のサブプライムローンの焦げ付きで、みずほとカリヨンの立場を一転させる。サブプライムローンを原資産として組成されたRMBS(サブプライム担保証券、ABSの一種)のデフォルトにより、そのRMBSを組み込んだCDO市場が機能停止に追い込まれたからだ。
 みずほの人材引き抜きで自らのCDO業務が機能停止状態に追い込まれたカリヨンは、結果的にサブプライムローンショックの影響から逃れることができた。一方のみずほは、CDOなどオルタナティブ投資部門に人材込みで不良債権を抱えることになった。
 みずほはオルタナティブ運用商品を組成し、機関投資家に販売するため、各種のローン資産や証券化商品を購入しており、その多くは、4月に設立されたニューヨークの「みずほオルタナティブインベストメンツ」やロンドンの「みずほインベストメントマネジメントUK」に保有されていると見られる。その額は少なく見積もっても1000億円規模と見られている。(後略)

 

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