経 済
誰も知らないサブプライムの闇
沈黙する中小金融機関の無気味【金融ジャーナリスト匿名座談会】
(前略)C 問題はこれから先どうなるかだ。サブプライム残高は1.3兆ドルだが、そこに米国が政府資金を投入して、問題債権をすべて買い込むということもあるかもしれない。すでに米国では有力議員がそうした提案をしている。
B 問題の根を絶とうというわけだね。しかし、うまくいくんだろうか。
C 公的資金の注入は日本でも大問題になった。もちろん簡単にはいかないよ。
A 米国はいざとなったらやるだろう。しかし問題は、それたけでは済まないことだ。CDOに組み込まれた素材は、実はサブプライムだけではないからだ。ハイイールド債、つまり、かつてのジャンク(屑)ボンドなども組み込まれている。これらの価値も暴落している。
B つまり、1.3兆ドルの問題ではなく、もっと大きくなってしまったということだね。
C いったいどのくらいの規模になっているんだろう。
A その実態がつかめないのが、この問題のやっかいなところだ。
B 日本の金融業界には今後、どんな影響が出てくるだろう。野村証券は第1四半期決算の際、サブプライム関連投資で700億円の損失が発生したと発表しているが。
A メガバンクなど大手銀行も次々に発表したが、経営を揺るがすほどの規模の損失ではないようだ。
B それならひと安心だ。日本は心配ないということだね。
A いや、そうとも言い切れないよ。まず第一に、各社の発表をよくみると、売却損が出ましたというところと、評価損が出ましたというところに分かれている。売却損であれば、それで手仕舞いだから後腐れはないが、評価損ということは問題が進行し続けていることを意味している。売却できずに持ち続けているわけだからね。
B しかも評価損の場合は、その評価をどうやってしたのか、という問題もあるね。いま、ABSやCDOの市場は、流通がストップして転売不能の状態にある。ということは、価格がないわけだ。いったい誰が価格をつけて評価損を算出したのか、そこが不思議なところだ。
C 確かに、証券化商品については常にその問題がつきまとう。取引所などに上場されているわけじゃないからね。
A 結局、CDOやヘッジファンドの運営主体が「この程度の価値です」と言っているのにすぎない。だから発表された評価損はそうあてにはできないし、これからも分からないということになるのだろう。
C それでも大手銀行クラスであれば、やり過ごせるレベルだろう。投資規模は数百億円、大きく見積もっても1000億円程度だろうから、すべてを償却しても経営には響かない。
B 今のところ沈黙を続けている地銀や中小金融機関、あるいは投資信託などはどうなんだろう。
A 問題はそのクラスなんだ。地銀、第二地銀は貸し出しが伸びずに、ファンド投資などで利益を出すという動きをしてきた。中には、経営規模に照らして相当巨額のファンド投資をやっているところもあると聞いている。金融庁が検査でそうした状況をきちんとチェックしていたかどうかだ。
B サブプライム問題は、今回火を噴くまで日本の新聞がまったく記事を出さずにきたが、『フィナンシャルタイムズ』など海外の有力新聞は連日のように報道し、警鐘を鳴らしていた。その一連の報道の中に「日本では信用組合クラスで経営危機が起きるのではないか」という記事があった。とても気になる内容だった。(後略)