記事(一部抜粋):2007年9月掲載

政 治

「政治休暇」を終えた小泉

安倍、麻生と組み、政局を支配【永田町25時】

 前号で指摘したとおり、安倍晋三は参院選で与党が大惨敗を喫したにもかかわらず、首相の座を手放さなかった。前首相の小泉純一郎、創価学会名誉会長の池田大作、元首相の森喜朗――親分筋にあたる後ろ盾三人の了解が得られたからだ。当初は自民40議席以上が残留の目安だったが、開票当日の夕方に予想以上の大敗が判明、急遽、何がなんでも居座る方向に転換した。
 3人のうち、方向転換を主導したのは政局の天才・小泉。池田と森は「国民の猛反発でひきずり降ろされる」という不安から、一時は退陣を考えたが、小泉の政局勘と安倍の強い意向を否定しきれなかった。
 もう一人、安倍が早々と居座りの了解をとったのが、外相で閣内ナンバー2の麻生太郎。開票当日、2人の間で次のやりとりがあった。
「内閣への国民の批判が強いので立て直したい。要となる官房長官を誰にするかが重要と思う」
「官房長官はあなたの気心の知れた人がいい。私は党の方で支えたい。参院で民主党が過半数になれば、国会を舞台に党対党の戦いになる」
 麻生は幹事長就任を自ら強く望んだ。安倍がいつ退陣しても、その後を襲える立場を確保するには、やはり幹事長がいいと判断したのだ。
 この段階では森はまだ安倍と麻生のやりとりを知らず、マスコミに、国対委員長だった二階俊博を幹事長に推す発言をしている。民主党代表の小沢一郎に対抗するには、小沢を知り尽くしている二階に党の指揮を任せるのがいいと考えたからだ。極めて常識的な発想だが、安倍周辺の情報取得では遅れをとっていた。
 安倍と麻生のやりとりを知っていたのは小泉。安倍が即座に連絡をとったからだ。小泉が「麻生幹事長」に賛成したことで、安倍の心は固まった。以後、安倍の小泉に頼る姿勢が強まる。農水相の赤城徳彦を選挙直後に更迭した際も、安倍は小泉のアドバイスを受け入れた。選挙の1カ月前、原爆発言の防衛相・久間章生のクビを切り、後釜に小池百合子を据えた人事も小泉の助言だった。
 小泉、安倍、麻生の3人には、今後の政局見通しについて「共通の認識」がある。麻生の側近議員によれば、それは?衆院解散はできるだけ先延ばしする、?その間に民主党内の反小沢勢力との連携を強める、?来年7月に北海道で開かれるサミット後、安倍内閣の支持率が上昇していなければ総辞職、麻生に政権を禅譲する――に集約できる。安倍は我慢の政権運営を続けて国民支持の回復をねらい、ダメなら小泉のサインが出次第、麻生にバトンタッチするという筋書きだ。(後略)

 

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