「自民党の獲得議席が40以上なら首相の座にとどまればいい」
負けが確実とみられた参院選に突入した後、安倍晋三にそうアドバイスする有力者が何人かいた。選挙後に無所属などへの多数派工作をするにしても、公明党と合わせた与党の議席が過半数を超えるには、自民党は50議席近くを獲得しなければならない。40以上というのは大甘もいいところだ。マスコミには最低ラインは橋本龍太郎が責任をとって辞任した44議席という議論もある。だが、それを下回る40そこそこでも安倍は案外居座るかもしれない。
創価学会名誉会長の池田大作の長男、城久は1984年に病死した。この長男と安倍は成蹊学園の同級生で小中高とクラスメイト、実は親友に近い遊び仲間だった。受験勉強をしなかった安倍は、東大や早稲田、慶応出身の政治家のように政財界の働き盛りの学友はいない。しかし、おぼっちゃん学校を出たメリットがこんなところにあった。「池田は晋三を城久の身代わりのように思って可愛がっている」(創価学会の内情に詳しい大手新聞社デスク)。
池田は参院選の直前、会合で公明党代表の太田昭宏を面罵するなど、政治の話になるといらだちを隠せない時期があった。ちょうど安倍内閣の支持率が急落したころだ。公明党の中堅議員はこう話す。
「安倍政権を維持するのは、池田名誉会長から太田さんに与えられた絶対の課題のはずです」
安倍に池田から「選挙に負けても辞めるな」というアドバイスが間接的にせよ届いているのは確実。公明党が安倍続投を強く主張すれば、安倍に代わって首相を務められる人物は自民党内にはいない。
次に同じアドバイスをしたのが、かねて「参院選は政権を選択する選挙ではない」といい続ける前首相の小泉純一郎。理屈は以下のとおり。参院で過半数を割っても衆院で自民、公明の与党は議席の3分の2という圧倒的な多数を占める。議院内閣制で首相の指名は衆院が優越する。参院選で敗北しても自民党から首相を選出することに変わりはないのだから、安倍が退陣してもしなくても、自民党として国民に対して果たす責任は同じ。むしろ安倍が続投して、次の衆院選で国民の審判を受けるのが政治の筋だ――。
小泉が心配しているのは、安倍が退陣し後任の首相が国民新党の亀井静香らに鼻づらを引きずり回される事態。小泉の宿敵である亀井は郵政民営化の撤回を主張しており、参院運営の名目で妥協すれば小泉改革が破綻する。それを避けるために、小泉は民主党の改革派と気脈を通じてきたのであり、次の衆院選挙までに「小泉新党」の旗揚げを含め、民主党分裂に向けた工作に全力をあげるつもりなのだ。そのためには、どんなに負けようと安倍が退陣しては困る。(後略)