大手新興ベンチャーの失速が鮮明になってきた。
2007年第3四半期決算で前年同期の黒字から一転して284億円もの最終赤字になったグッドウィル・グループは、介護ビジネスを手がける子会社コムスンが、介護報酬の不正請求で厚生労働省から介護事業所の新規の指定・更新の打ち切りを通告される一大不祥事を引き起こした。グッドウィル本体も内部告発で杜撰な実態が露呈し始めるなど、最大の正念場に立たされている。
IT系ベンチャーでも、インデックス・ホールディングスが07年2月中間連結決算で62億円の最終赤字。GMOインターネットも買収した消費者金融の過払い金返還に備えた貸倒引当金の計上によって120億円の最終赤字。フォーサイド・ドットコムに至ってはなんと650億円もの最終赤字を強いられ、かつて持て囃されたビジネスモデルは完全に崩壊している。
USENは、インテリジェンス(人材サービス)の子会社化や関連会社株の売却で07年2月中間期は辛うじて黒字転換を果たしたものの、目玉事業の無料動画配信サービス「Gyao」の採算性は依然として改善していない。ピーク時には2000億円あった有利子負債の返済に追われる宇野康秀社長に、ライブドアや横浜ベイスターズ買収に名乗りをあげたかつての勢いはない。
前期に上場以来初の減益決算となった楽天も、本業の「楽天市場」は競争が激化の一途で、楽天証券などの金融事業も減速。TBSとの経営統合問題が泥沼化しているうちに肝心の足元の業績が揺らぎ始め、これに膨大な借入金が重くのしかかる。一世を風靡した新興勢力の雄たちは、こぞって総崩れの様相を見せ始めた。
そうした中で気になるのが、USENの第3者割当増資を引き受け、宇野社長に次ぐ第2位の大株主になったゴールドマン・サックス証券(GS)の動き。「USENのほか、楽天、インデックスなども含めたベンチャー大連合とでもいうべき壮大な再編シナリオを描いているのではないか」(金融関係者)との見方が浮上している。たしかに最近のGSは三洋電機再建の頓挫など精彩を欠いており、「資金はあるが投資のネタがない」(大手ファンド幹部)というジレンマ状態にある。大物ベンチャーの業績悪化に乗じた大型案件のコーディネートは絶好のビジネスチャンスといえる。
TBSVS楽天のバトルには、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)とABCマートが参戦しているが、その間隙を突く形でのインターネット、流通、メディアの大連合形成というシナリオも決して絵空事ではない。そもそもITビジネスとは、中長期的にはガリバー企業がイニシアチブを握るものであり、ヤフーやグーグル、アマゾンに対し、日本勢が今後どう対抗していくかを占ううえでも、GSの動きからは目が離せない。(後略)