記事(一部抜粋):2007年6月掲載

経 済

夏場から為替に大きな変動が 日本株の仕込み場がやってくる

【証券マン・オフレコ座談会】

(前略)B NYダウが年初から5月半ばまでで8.4%上昇し、史上最高値になっているのに対し、日経平均は1.6%しか上がっていない。この日本株の低迷をどう分析したらよいんだろうか?
C その理由はBさんの方が詳しいんじゃないの? おそらく、「130/30(ワン・サーティ・サーティ)型」のヘッジファンドが日本株低迷の原因じゃないだろうか。
B それもあるかもしれない。「130/30」は欧米の年金などに人気で、ヘッジファンドの運用残高の約7%、日本円で約13兆円になってきた。
C 投下資本の130%をロング(買い)にして、30%をショート(売り)にするからこのような名前になったらしいけど、問題は何を買って何を売っているかということ。どうやら欧米と新興国の株を買って、日本株を売っているらしいじゃない。
B そのようだけど、それもここ1〜2カ月の話だと思うよ。夏場以降は全く逆にしようとの動きがある。
A この「130/30型」ヘッジファンドが欧米の年金に人気となったのは、おそらく新BIS(国際決済銀行)規制が影響したんだろう。大半のヘッジファンドは新BIS規制により、リスク・ウェイトが1250%になってしまう。ところが130/30ファンドは新BIS規制の規制の対象外らしい。
C 当然、先物でヘッジするため、どうしても現物が先物の動きに翻弄されてしまう。
B 金額が金額だけに先物主導相場となるのはやむをえない。
A この新BIS規制を見込んで、3月決算前に日本の金融機関がファンドの解約売りを出した。これが2月末の世界同時株安の要因と言われている。
C ところで、欧米と新興国の株をロングポジションにして、日本株をショートにした理由は一体何だったんだろうか?A おそらく為替の動きだろう。村上ファンドに投資していた日銀総裁の福井俊彦を見ればわかるように、著名なファンド(ヘッジファンド)は各国政府機関やその関係者との関係を深めているようだ。要はインナーサークルの関係にある。かつて、米国の金融政策をズバズバ当てたことで知られるヘンリー・カウフマンも、おそらくそうだったのではないか。
B つまり、各国通貨に対して円は弱含みに推移するとわかっていたということか?
A ということだろう。
C ここ数十年の為替、株、債券、商品の年間の変動率を見ると、一番高いのは為替になるらしい。だから、ヘッジファンドの運用者はどの株や商品が上がるかではなく、どの国の為替が一番上がって、どの国の為替が下がるかにポイントを置かざるをえない。
A 日銀が異常な低金利を続け、市中に資金をダブつかせている。その資金が円キャリートレードでヘッジファンドに流れ、日本株売りとなる。こんな構図となっているんだろう。
C それに投資信託ブームが円売りに拍車を掛けている。異常低金利の日本を避けて、海外の株式や債券を組み入れる投信が人気だ。
B 団塊の世代の退職金や、2005年から郵便局が投信を扱い始めたこと。さらに銀行での投信販売のハッパの掛け方は、バブル時の証券会社を超えているとの声がある。それらの資金が海外へ向かうとなれば、おのずと日本売りのポジションにせざるをえない。これも日本株低迷の原因になってる。
A ただ、Cさんの言うように夏場から逆ポジションの動きがあるとすれば、為替に大きな変動があるのかも知れない。(後略)

 

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