政 治
「与党惜敗」を望む自民ベテラン組
参院選後に「森VS二階」抗争が勃発【永田町25時】
7月の参院選で与党が過半数割れしても安倍政権は継続、と国会議員のほとんどが思い始めている。前首相の小泉純一郎が3月上旬に安倍を叱咤した一言「参院選は政権選択の選挙ではない」が効いているのだ。
しかし、選挙結果によって政権をめぐる力関係は変わる。分かりやすくいえば、だれが安倍政権を動かす存在になるのか。具体的には、秋までには断行する内閣改造と党役員人事がどうなるのか。与党が大勝か辛勝か、惜敗かのそれぞれのケースで事情は大きく違ってくる。自民党議員、とりわけ実力者の視線はすでにそこに焦点が絞られている。
5月8日夜、東京・築地の高級料亭に1969年初当選の与野党ベテラン議員が顔を揃え、参院選の行方を予想した。元首相の森喜朗、国民新党代表の綿貫民輔、民主党代表の小沢一郎、同最高顧問の渡部恒三、同じく羽田孜。「民主大勝」に政治生命をかける小沢一郎以外の全員が「どちらにしても僅差」と言い、小沢は多勢に無勢で沈黙。森、渡部が「僅差で与党が負ければ、神主の綿貫さんは本当の神様になる」と酒の勢いで騒いだ。
与党が非改選と併せて参院の過半数を確保するのに必要な議席数は64。公明党の獲得予想が13なので、自民党にとっては51議席が勝敗ラインとなる。
森や渡部のいう「僅差で与党が負け」は自民党が46前後のケースを指す。つまり、国民新党の4議席前後と新党日本の1議席、それに無所属を足せば穴埋めできる範囲内。このケースでは綿貫や国民新党代表代行の亀井静香が参院国会運営のキャスティングボートを握ることになる。
綿貫の国民新党の生きる道はもともとそれしかないから、煽てられて笑顔を隠せないのは当然だが、森が「僅差、僅差」と嬉しそうに繰り返し、綿貫を必要以上に持ち上げたのは、「国民新党との駆け引きで安倍が森を頼らざるを得ない惜敗」が望むところだからだ。
自民党内には、本音レベルでは「与党惜敗」を望むベテラン議員が大勢いる。幹事長の中川秀直ら安倍政権で要職にある実力者や安倍周辺の若手は大勝が悲願だが、現状よりも政権への影響力を増したい実力者は揃って惜敗を願っている。安倍の力がそがれることを望む派閥領袖クラスもほとんど同じ気持ち。その代表格が森と国対委員長の二階俊博。政界は魑魅魍魎が跋扈する視界不透明な権力の修羅場なのだ。
元自由党の二階は民主党内に知己が多い。その人脈を生かして「与党惜敗」に備えた工作を重ねている。5月14日の国民投票法案の参院本会議採決で、民主党の元郵政相・渡部秀央が党方針に反して賛成票を投じ、新党日本の荒井広幸が退席した背後には二階の影がちらつく。(後略)