(前略) セブン‐イレブン・ジャパン本部から不当に高いロイヤルティを徴収され続けたとして、埼玉県でセブン‐イレブン店舗を経営するFC加盟店のオーナーH氏がその返還を求めた裁判に、6月10日、ついに最高裁の判決が下されることになった。1審の東京地裁では原告(H氏)敗訴、2審の東京高裁では原告の逆転勝訴、それを受けて被告のセブン‐イレブン本部が上告していた注目の裁判。最高裁の判断次第では、加盟店から利益を絞り取るコンビニ本部のビジネスモデルそのものが否定されかねない。はたしてどんな結末を迎えるのか――。
(中略)
実はH氏の裁判についても、ここにきて加盟店側の不利を予想する声があがり始めている。というのも、先の高裁判決から2年以上が経過したこの4月13日、最高裁で弁論が再開され、H氏による陳述が行われたからだ。
「最高裁の弁論は、原判決を差し戻すために行われるのが一般的」(加盟店側弁護士)であり、セブン‐イレブン本部に不当利得の返還を命じた画期的な東京高裁判決が、土壇場でひっくりかえる可能性が強まっているのだ。
加盟店サイドに失望感が広がる中、しかし注目すべき事実も明らかになった。群馬県の元加盟店オーナーM氏が、H氏と同様セブン‐イレブン本部に不当利得の返還を求めて訴えている裁判(東京地裁)で、裁判所が選任した専門委員のO公認会計士が、本部側の主張に疑義を呈する「説明」を裁判所に対し行ったのである。
ロスチャージをめぐる一連の加盟店VS本部の裁判では、これまで双方が公認会計士や大学教授などの専門家を立て、互いの主張を展開してきた。加盟店側の証人は、コンビニ会計が会計原則から逸脱し、適法でない旨を陳述し、本部側の証人は、コンビニ会計は特殊なものではなく、これを採用することに何ら問題がない旨を主張してきた。
その結果、H氏の東京高裁判決以外は、本部側の主張に引きずられる判決が下される傾向にあった。
ところが裁判所が選任したO会計士は、コンビニ会計が廃棄ロスや棚卸しロスを仕入れ原価でなく営業費に計上していることに関して、次のような説明を行っている。
《会計の文章は法律文書とは異なり、「売上原価または販売費(営業費)として処理する」といった文章は「売上原価として処理することが適切な場合は売上原価として処理し、販売費として処理することが適切な場合は販売費として処理する」と読む》(3月26日付で東京地裁に提出された説明文書)
つまり、本部は「廃棄ロス、棚卸ロスは売上原価と営業費のどちらに計上してもいい。だから営業費として処理している」と主張しているが、それは間違いで、「適切なほうに計上するのが企業会計である」とO会計士は諭しているわけだ。ここでいう適切な処理が、企業会計原則に則った、ロスを売上原価に計上する方式を指すのは自明だろう。
営業費とは本来、販売手数料、荷造費、広告宣伝費、賃金、交際費など、販売活動として積極的に支出する「費用」のことをいう。ところが廃棄ロスや棚卸ロスは、販売活動のために支出する費用というより、実際には「損失」である――O会計士はそのようにも説明している。(後略)