記事(一部抜粋):2007年5月掲載

政 治

安倍と松岡の「どろどろした関係」

参院選後に「悪貨切り捨て」の秘策【永田町25時】

 月刊誌の対談でジャーナリストの桜井よしこに「松岡利勝さんをどうして農水大臣に」と突っ込まれた首相の安倍晋三は苦しい言い訳をした。
「農業を再生、活性化させていくと同時に、日本の農産物をもっと海外に輸出していきたい。そのためには農業の専門家に農水大臣を務めていただき……」
 かつて亀井静香のともに弟分だった安倍と松岡の間に「どろどろした関係」(町村派中堅)があることは永田町では皆が知っている。ベテランの政治部記者に聞けば、「安倍は松岡に迫られ、危ないと思いながらも閣僚にした」とたいがいは同じ解説をする。庶民感覚とかけ離れた説明のつかない事務所経費問題だけでなく、松岡の周辺は常にきな臭い。
 4月に入ってから流れている噂によれば、農水省所管の独立行政法人の官製談合疑惑に絡んで東京地検が松岡との関係を捜査している。この行政法人の理事長が松岡の息がかかった農水省OBで、談合の疑いで立ち入り調査した公正取引委員会が、年間10億円の小規模談合としては異例の、地検への告発を行う方針だ。 
 もちろん情報は首相官邸に入っている。安倍も「事件になる前に松岡を切ることを考えた」(官邸筋)。政権の正念場となる夏の参院選に深刻な影響を与えかねないからだ。しかし安倍は、松岡擁護の姿勢を固めた。きっかけは3月7日夜の前首相、小泉純一郎との会談。同夜、小泉は安倍に政権維持の「秘策」を教えた。
 安倍はこの日、盟友の衛藤晟一の復党など、郵政民営化に反対した議員に配慮したことを、小泉にしかられると覚悟していた。ところが小泉は「自分の思うようにやればいい。復党など大した問題ではない。仮に参院選に敗れても、政権を投げ出す必要はない」と明言した。小泉は記者団にも「参院選は政権選択の選挙ではない」と漏らしている。しかしこれはおかしい。衆院だろうと参院だろうと、全国民が投票する国政選挙でノーなら政権は国民に不信認されたということだ。政局の天才である小泉が、参院選に負けても政権維持が可能と考えたのはなぜか。
 小泉が安倍に授けた秘策とは、「もし負けたら大幅な内閣改造で政権の再建を国民に約束すればいい」というものだ。その意味は「負けたのは国民が安倍を見放したのではなく、閣僚や官邸の周辺が悪過ぎた」という理屈。松岡や厚労相の柳沢伯夫ら、評判の悪い議員を庇い過ぎたために選挙に負けた。今度はそうした閣僚、周辺を切り捨てて安倍政権は再出発すると宣言することで政権を維持する。そのためには、参院選終了まで松岡や柳沢を徹底的に擁護していく必要がある――。(後略)

 

※バックナンバーは1冊1,100円(税別)にてご注文承ります。 本サイトの他、オンライン書店Fujisan.co.jpからもご注文いただけます。
記事検索

【記事一覧へ】