(前略)いまやアングラ勢力は、あらゆる業界、企業に巣くっており、「マル暴マネー」を高利回りで運用しつつ、マネーロンダリング(資金洗浄)を繰り返している。その手口は、第三者割当増資、株式分割、MSCB(転換社債型新株予約権付き社債)の発行など多岐にわたり、頻繁な株主異動、代表者・役員の交代を繰り返したり、融資や債務保証、手形の乱発を強要するケースもある。「企業再生ファンドや外資ファンドにも、大量のアングラマネーが紛れ込んでいる」(金融関係者)ともいう。
彼らの最大のターゲットは、いうまでもなく新興ベンチャー。そして「六本木ヒルズの共有ラウンジや経営者同士が集うパーティー会場では、仲間うちで増資や業務提携、株式分割などのインサイダー情報が平然と飛び交っていた」(IT企業経営者)というくらい、ベンチャー経営者の脇は甘い。これでは広域暴力団やフロント企業に籠絡されてしまうのは当然で、実際、新興ベンチャーを舞台にした「乗っ取り」や「会社ころがし」は枚挙に暇がない。
金融・捜査当局もここにきて不正摘発に向け本腰を入れ始めた。当面の注目はアドテックスの粉飾での再立件と、近未来通信の捜査の行方。また人員と権限が強化され「今年の最大のテーマはベンチャーと闇社会の癒着の実態解明」(幹部)と意気込む証券取引等監視委員会(SESC)の案件では、ハウスウェディングのパイオニアで東証1部上場のテイクアンドギヴ・ニーズ。2004年の株式分割の際、同社の野尻佳孝社長と親交のあるベンチャー経営者など3人がテイク社株を売買したインサイダー取引疑惑が浮上している。ただし「時効の関係で立件は微妙」(SESC担当記者)とも。
ちなみに野尻社長と親密な関係にあるといわれる井筒大輔氏が創業したオーベン(旧アイ・シー・エフ)も話題の企業。「今回の梁山泊事件で逮捕された川上八巳容疑者らによるオーベンへの経営介入の実態、具体的には粉飾疑惑や海外への資金流出に当局は関心をもっている」(大手紙デスク)という。
「100億円部長」として話題になった清原達郎氏のタワー投資顧問が実質的な大株主のJASDAQ上場企業、コマーシャル・アールイーも、ケネディクスとの資本業務提携や業績上方修正の発表前に役員らが自社株を売買したというインサイダー疑惑が燻り続けているし、電通とサイバーエージェントの子会社が絡んだインサイダー取引も立件の可能性が指摘されている。サイバー社の子会社であるシーエー・モバイルが、電通グループとの資本業務提携を発表する3日前に、サイバー社株が急騰、さらに同じく子会社のマザーズ上場企業、ネットプライスも、電通子会社との提携を発表する直前に株価が急騰するなど、明らかに不可解な動きを見せていた。
朝日新聞がスクープした三洋電機の粉飾疑惑は立件が見送られたようだが、迷走の末に米シティ傘下入りが決まった日興コーディアルグループについては、東京地検特捜部とSESCが、旧経営陣による粉飾、背任容疑での摘発を虎視眈々と狙っており、4月以降の最大の目玉になりそう。
ほかに特捜部案件としては、巨額の所得隠しが発覚した浅川忠俊氏が会長を務めた住宅ローン保証最大手、全国保証の摘発が有力視されている。(後略)