記事(一部抜粋):2007年3月掲載

経 済

【企業研究】ニューオータニ・グループ

「お告げ」にはまった同族経営

(前略)こうしたESIの詐欺商法を側面から支援したのが、「慧光塾」という新興宗教まがいのコンサルタント会社を経営していた光永仁義なる人物である(05年7月に死去)。
 光永は、自ら特殊な霊能力があると喧伝し、企業経営者などから持ちかけられる様々な相談に、「お告げ」によって答えるという独特のコンサルタント活動を行っていた。傍目にはインチキ宗教のようにしか映らなくとも、当人たちは真剣そのもの。光永は「信者」たちから絶大な信頼を集めていたという。
 そうした信者の中でも最も熱烈に光永を信奉していた一人が、日本を代表するホテル「ニューオータニ」の大谷和彦社長(60歳)であり、その従兄弟で東証1部上場の不動産会社「テーオーシー」(TOC)の大谷卓男社長(53歳)である。
 慧光塾はニューオータニのガーデンコートにオフィスを構え、ニューオータニ社長の和彦から頻繁に経営その他に関する相談を受けていたという。和彦が具体的にどんな相談をし、光永がどんなコンサルティングをしていたのかは定かでないが、光永が出した回答が、相当神がかっていたことは想像がつく。というのも、和彦は年に数回、幹部らを従えてホテルの敷地内を大量の塩を撒きながら練り歩く「塩撒き」の儀式を行っていたからだ。
「この塩撒きの儀式は、当然のことながら従業員には不評でした。しかし創業家の社長の力は絶大で、だれも正面きって反対することがきない。渋々つき従っていました」(ホテル関係者)
 一行が塩を撒きちらした後を従業員たちが掃除して歩く異様な光景は、ホテルの宿泊客らにも度々目撃されている。また、東京・西五反田のTOCビルでも同じような儀式が行われていたという。
 実は慧光塾の名前は、ESIが摘発されるかなり前からマスコミで注目を集めてきた。というのも、ほかならぬ安倍晋三首相が光永と親密な関係にあったからだ。05年4月、光永の長男が穴吹工務店の社長の娘と結婚式をあげているが、媒酌人を務めたのが、なんと安倍夫妻だった。
 安倍はまた、慧光塾の関係会社が販売する霊験あらたかな「ミネラルウオーター」の広告塔にもなっており、光永は安倍家の危うい人脈を象徴する人物として、事件記者たちからマークされていたのである。
(中略)
 一方、光永を通じて和彦以上にESIに肩入れしてきたのが、TOC社長の卓男である。
 ESIの本社は東京・西五反田のTOCビル内にあったほか、資金繰りにあえぐESIが03年12月に10億円の増資をした際、TOCはそのうちの8億円以上を引き受けている。
 この増資については、特捜部も詐欺罪を適用できるか検討したようだ。というのも、増資から4カ月後の04年4月、ESIは事実上倒産し、増資に応じた企業が資金をドブに捨てる形になったからだ。つまり8億円をわずか4カ月でパーにしたTOCは「被害者」ということになる。
「当時TOCに対し、ESIを刑事告訴するよう勧める人もいたが、結局、告訴には至らなかった。損金として落として終わりです。増資の引き受けは卓男社長が独断で決めたもので、ここは微妙なところですが、きちんと取締役会の承認を得て決定したとは言い切れないところがあった。明らかにトップの経営判断のミスですが、結局、株主に対する説明責任を果たすこともなく、臭いものにフタをしたのです」(TOC関係者)
 TOC社長の卓男に、増資の引き受けを強く勧めたのは「光永教祖」である。
「京塚は素晴らしい経営者だ、ESIはいずれ上場するからと、自信たっぷりに言い含めていました。信者である卓男社長は素直に信じたようです。でなければ八億円もの大金をポンと出すはずがありません。一方、光永氏は自身、ESIに2億5000万円もの資金を貸し付けていて、同社の経営が火の車だということは重々承知していた。そこで光永氏は、自分の貸付金を回収するために、10億円増資を京塚社長に持ちかけたのです。この増資に応じたのはいずれも光永氏を信奉する経営者たち。TOCに次ぐ大口出資者は、志村けんと研ナオ子のCMで知られるプチシルマの販売元であるレダで、約1億5000万円を出しています」(ESI元幹部)
 払い込まれた10億円は、しかしすぐにESIの口座から消えてなくなったという。
「光永氏は2億5000万円の貸付金を回収すると同時に、別途5000万円を手数料として徴収している。また増資資金が振り込まれた口座は三井住友銀行のものだったため、同行も即座に、貸し付けていた3億8000万円を回収しています。三井住友から受けた融資は無担保融資で、そもそも優先的に返済する必要のまったくないもの。光永氏と三井住友が一緒に絵を描いた可能性があるのです。結局、残りの資金も従業員への未払い給与や、監査役への報酬、外国にいる会計士への送金、別の借金の支払いなどであらかたなくなってしまいました」(同)(後略)

 

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