記事(一部抜粋):2007年3月掲載

経 済

首相の親密企業「アパ」の綻び

【情報源】

(前略)アパグループの耐震強度偽装がようやく発覚した。昨年来、イーホームズの藤田東吾元社長らが疑惑を指摘してきたが、国土交通省はこれを公表せず放置してきた。「アパグループの元谷外志雄代表と蜜月関係にある安倍首相のスキャンダルに発展することを恐れたから」(自民党担当記者)という指摘もある。元谷代表と政界のつながりは、20年近く前の、同じ石川県出身の森喜朗元首相との出会いまで溯り、旧森派の政権が続く中、安倍氏とも親密な関係を築いてきた。元谷氏はヒューザーの小嶋進社長も入会していた安倍氏の後援会「安晋会」の副会長を務め、東京・西麻布の豪邸に安倍氏を招待したこともあったという。
 そうした「政治力」がものをいったのか、アパの地元・北陸の主要駅前には同社のマンションやホテルが林立、旧国鉄の保有地も多数所有しているほか、都市再生機構からも土地を取得している。アパと政界とのパイプはヒューザーの比ではないのだ。そのため「国交省としては今さらアパ問題を本気で摘発する気はない。自分たちの保身のためにも結局ウヤムヤにするのでは」(前出記者)との見方が大勢を占める。とはいえ、安倍政権が国交省に借りをつくり、新たな時限爆弾を抱えこんだのは間違いない。
 アパグループは、アパを中核にアパホテル、アパ建設、アパホームなど不動産・建設、ホテル、ゴルフ場を手がける14社で形成され、グループ間で株を持ち合っている。業績はといえば、熾烈な過当競争で四苦八苦の同業他社を尻目に急成長を遂げ、順調そのもの。ちなみに2006年二月期は連結売上高が597億円、同経常利益が84億円で、いずれも前年度を上回っている。
 しかし死角も見え隠れする。内部資料によると、連結有利子負債は約570億円に達し、明らかな過剰債務状態。グループ内には、西武鉄道グループから買収したものの稼働率が50%台と低迷している「アパホテル&リゾート東京ベイ幕張」(旧幕張プリンスホテル)のほか、赤字のゴルフ場経営会社「アパリゾート」など不振企業も抱えている。しかもこれだけの事業規模であるにもかかわらず、すべてが未上場で、グループの全貌はベールで包まれたまま。「不動産を購入する際のSPC(特定目的会社)を10社以上抱えている」(大手サービサー)ようで、このSPCの分も含めれば負債はさらに膨れ上がる可能性がある。
 グループ各社の決算期のズレも気になる。たとえばアパ本体の決算期は2月だが、アパ住宅は1月、アパ建設は5月、アパホテルは11月、そしてアパホームが4月と、見事なまでに異なっている。「穿った見方をすれば、決算期のズレを利用した決算操作は可能」(大手監査法人)であり、「不動産登記の移転を伴わないグループ間の不動産売買や固定資産を計上しているとの噂もある」(金融関係者)という。(後略)

 

※バックナンバーは1冊1,100円(税別)にてご注文承ります。 本サイトの他、オンライン書店Fujisan.co.jpからもご注文いただけます。
記事検索

【記事一覧へ】