記事(一部抜粋):2007年3月掲載

政 治

外される「小泉後継」の仮面

民意を読み違えた安倍の迷走【永田町25時】

 自民党幹事長の中川秀直と参院議員会長の青木幹雄らが2月5日に会談して、4月の統一地方選、7月の参院選に向けて「無党派対策」に重点を置く方針を確認した。宮崎知事選と北九州市長選に敗北、愛知県知事選で苦戦したのは無党派層の支持を得られなかったのが原因と分析したからだ。なんと間の抜けた話かと小泉純一郎は苦笑したに違いない。無党派層の自民党離れがなぜ起きているのか、安倍政権の支持率がなぜ低下し続けているのか、根本的な理由を中川や青木は理解していない。状況を正しく認識せずに、無党派対策など練りようがないからだ。
 昨年秋、安倍内閣の発足にあたって、安倍の当面の敵は青木が率いる参院自民党と、多くの政治ウオッチャーは指摘した。旧来の自民党をぶっ壊す作業をして無党派層を引き付けた小泉がついに崩せなかったのが参院自民党。ならば「小泉後継」である安倍政権は「守旧派の牙城である青木の参院」と鋭く対立するはずだった。ところが安倍は組閣にあたって青木らの要求を、ポストも人も全面的に受け入れ、宥和した。そのときから、小泉自民党を支持した無党派層は「安倍は本当に小泉後継なのか」という疑問を持った。
 その後、小泉後継とは思えない安倍の態度が次々と明らかになった。小泉改革の象徴である郵政民営化に造反した11人の議員を復党させた、しかも、2月にはあろうことか夏の参院選岐阜選挙区では衆院落選組の藤井孝雄の推薦を決め、公認が決まっていた現職の大野つや子を出馬断念に追い込む措置をとった。旧田中派の系譜である藤井は総裁選で小泉に挑み、一連の改革に反対した反小泉の代表的な人物だ。「当選すれば復党させる」と参院幹事長の片山虎之助は断言している。
 青木は安倍政権発足直後の昨年10月、「郵政造反組を復党させなければ私は参院選をぶん投げる」と安倍を恫喝している。この言葉に屈した安倍は、青木や片山の路線に従って参院選を戦うつもりなのだ。
 安倍は1月23日に森喜朗、24日に中曽根康弘と歴代首相に教えを乞うた。小泉に遠ざけられていた長老2人は口をそろえて「支持率など気にすることはない。思う通りにやれ」と激励した。自民党内のベテラン議員は安倍の旧自民党路線への回帰が嬉しくて仕方がない。(後略)

 

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