記事(一部抜粋):2007年1月掲載

政 治

機能不全の「仲良し政権」

早くも「ポスト安倍」への蠕動【永田町25時】

 2006年も暮れになって、外相の麻生太郎が派閥を旗揚げした。12月11日午後、麻生と衆院議長の河野洋平が会談して河野派(11人)をいったん解散、同月一九日に麻生派に衣替えすると決めた。麻生派は先の総裁選で麻生を支持した議員を加えて20人規模となった。
 古賀・丹羽派、谷垣派との旧宏池会系三派の統合による「大宏池会」への第一歩だという。構想は分かる。だが、安倍政権が発足してまだ間もないこの時期に、有力閣僚が新派閥を結成する政治行動は異例。大派閥の長を目指すとは、永田町の常識では即ち政権を目指すという意味にほかならない。首相の睨みが効いた小泉政権下ではあり得なかった。
 麻生は11月下旬、首相官邸を訪れ、安倍晋三に派閥の領袖になると報告、安倍は賛意を示したとされる。しかし、当時の安倍は郵政民営化に反対した議員の復党問題で指導力を発揮できず脂汗を流していた真っ最中。顔は笑っていても腹の中は煮え繰り返ったに違いない。支持率低下が明らかな政局の流れにつけこむような話だからだ。
 さらに、郵政民営化反対議員でただ1人復党しなかった平沼赳夫が新党を旗揚げするという噂が飛び交う。これも安倍の右サイドからの評判の悪さが背景だ。靖国参拝や教育基本法の内容で創価学会や中国に配慮が過ぎるという自民党内部に広がる不満。それをバックに反創価学会の宗教団体や右文化人の団体「日本会議」が支援するという。安倍は思想・理念の似通った平沼を復党させる腹積もりだったが、世論の反発を恐れた幹事長、中川秀直がハードルをあげ実現しなかった。平沼は安倍の優柔不断を恨み、「あっちこっちにいい顔をする安倍に憲法改正は任せられない」と考えている。すでに民主党の小沢一郎路線に反発する議員にも平沼周辺が働きかけている。
 安倍政権が盤石で支持率が高いままだったら、麻生や平沼の動きは起こらない。政界で権力に逆らうのは権力が衰弱すると見極めたときだ。本来なら麻生も平沼も最高権力者である首相に擦り寄ることで自らの権力を維持しようと考える。ところが2人の動きは、早くも「ポスト安倍」に向かっている。
 安倍政権の支持率の急落は復党問題と道路特定財源で指導力を発揮できなかったのが直接の原因。参院のドン青木幹雄や派閥ボスの森喜朗、幹事長の中川らに振り回される安倍の姿に国民が失望した。永田町では政権の機能不全が言われ始めている。安倍の意向を通す態勢がどこにもない。政権は迷走を続ける可能性が大であり、前首相秘書官の飯島勲らは安倍政権は短命に終わると予想する。
 安倍は組閣にあたり青木や森の要求に配慮したが、一方で気心の知れた「仲良し」を要所に配した。(後略)

 

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