記事(一部抜粋):2006年11月掲載

連 載

「整理屋」と結託する悪徳弁護士

【岐路に立つ消費者金融】中川一博   

(前略)
 多重債務問題の解決を阻むひとつの原因として、「整理屋」と組む弁護士の存在がここにきてクローズアップされている。
 整理屋とは「あなたの債務を一本化します」「借金問題を解決します」などと謳った広告(夕刊紙や週刊誌によく掲載される)やダイレクトメールで多重債務者を誘い、債務整理に協力する素振りをみせながら、実際には何もせず、借り手から高額の手数料をだまし取る業者のことだ。整理屋にとりこまれたら、債務者は借金問題を解決するどころか、さらなる泥沼にはまり込んでしまう。この整理屋に協力する弁護士が決して少なくないのだ。
 整理屋は「法的整理」を請け負うことを看板にしているため、弁護士の「名義」を必要としている。そのため、弁護士会から処分を受けたり、高齢のため仕事にあぶれている弁護士をスカウトするケースが多い。こうした整理屋と結託する弁護士を業界では「提携弁護士」と呼んでいる。
 最近も、整理屋に協力した提携弁護士が大阪府警に逮捕されるという事件があったばかりだ。10月11日に弁護士法違反(非弁護士との提携)の疑いで逮捕されたのは大阪弁護士会に所属する畑井博弁護士(73歳)。調べによると、同弁護士は、大阪市の金融業、前川圭四郎被告(同法違反容疑で公判中)と共謀、債務整理を装いながら、手数料名目で債務者からカネを引き出していたという。
 畑井弁護士の行状が明るみになったきっかけは、昨年5月ごろ、大阪弁護士会に多重債務者の男性から「弁護士に債務整理を依頼し、手数料を支払ったのに貸金業者からの返還請求が止まらない」と相談が寄せられたこと。同弁護士会によると、男性は04年春、夕刊紙の広告をみて前川被告に連絡。その際に畑井弁護士を紹介され、前川被告に手数料を数回にわたって計40万円支払った。しかし業者からの請求はいったん止んだもののすぐに再開。しばらくして手数料をだまし取られていたことに気づいた。男性の相談を受けた大阪弁護士会が昨年11月、府警に告発したことで今回の逮捕につながった。
 弁護士法は、弁護士資格のない者(今回のケースでは整理屋の前川被告)が、報酬を目的に訴訟などの法律事務を取り扱うこと(非弁活動)を禁じるとともに、弁護士(畑井弁護士)が非弁活動を行う者から依頼者の斡旋を受けることも禁じている。しかし、整理屋と結託する弁護士は後を絶たないのが現実である。
 私は武富士に在職中、法務課長をしていたこともあり、必然的に弁護士と関わる機会が多かった。会社側の弁護士とはもちろん頻繁に連絡を取り合うわけだが、その一方で、対峙する相手方、たとえば債務者側の代理人から各種通知を受けたり、場合によっては実際に顔を合わせて交渉したりする機会も数多くあった。
 彼ら債務者側の弁護士の中には、後に所属する弁護士会から懲戒処分(戒告、業務停止、退会命令、除名)を受けた人もいた。懲戒理由はたしか整理屋の非弁活動の片棒をかついだことだったと記憶している。
 何らかの理由で懲戒処分を受けた経験のある弁護士でも、反省してまじめに債務者のために交渉に乗り出してくるのならいいが、処分が明けた後も再び提携弁護士稼業に身をやつし、形だけ受任通知を出し、その後の処理を何もしない呆れた弁護士が少なくない。そういう弁護士は、業者側の立場としては対応するのに楽な相手だが、きちんと債務整理をしてもらえると思って高い手数料を払っている債務者にしてみれば、とんでもない悪徳弁護士である。
(後略)

 

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