日本航空(JAL)の迷走が続いている。相次ぐ運航トラブル、前代未聞のクーデター騒動、前期の472億円の大赤字、そして2兆円もの巨額債務とまさに満身創痍。いまやソフトバンク、楽天と並ぶ過剰債務企業の代表格だ。信用不安の払拭と、来年3月に控える1000億円社債の償還資金捻出のために、7月には2000億円の大型増資を計画したものの、株価の低迷で結局1470億円にとどまり、2006年4―6月期も267億円の連結最終赤字を強いられた。旅客数の減少に歯止めがかからず、本業回復の兆しも一向に見えてこない。燃料コストの増大で10月から航空運賃の値上げに踏み切るが、客離れの加速→赤字拡大の悪循環を招く懸念もある。膨大な航空機のリース債務が重くのしかかり、給与カットや社宅、国内外ホテルの売却といったリストラ策も焼け石に水。実質債務超過とみられることから、もはや自立再建は困難との声が日増しに強まっている。
銀行も警戒感を募らせている。JAL単体の借入先は、融資残3300億円の日本政策投資銀行を筆頭に、みずほコーポレート(同400億円)、三菱東京UFJ(590億円)、三井住友(290億円)、第一生命(130億円)、日本生命(100億円)と続く。すでに某銀行や某生保ではJAL向け債権の債務者区分を破綻懸念先に引き下げている。みずほコーポ、三菱東京UFJ、日本政策投資などは要管理もしくは要注意としている模様だが、「今後は破綻懸念先へ引き下げ、貸倒引当金の積み増しも視野に入れている」(メガバンク幹部)ともいい、そうなれば、追加融資の要請に難色を示す事態も想定される。当面は9―10月の短期融資の借り換えに対する各行の対応が焦点になる。
国土交通省は「7―9月期の状況をみる」と表向きは静観の構えだが、「米パンナムなど航空会社のチャプター11(破産法)の事例を検証している」(業界関係者)との物騒な情報も。いずれにしてもJALが置かれている状況は視界不良、低空飛行どころか、墜落寸前だ。産業再生機構という駆け込み寺の債権買い取りが終了しているだけに、会社更生法などの法的手続きによる再建スキームも絵空事ではなくなっている。
実はこのJAL問題、政府系金融機関の統廃合問題と密接にリンクしている。というのも、財務省や金融庁は政府系金融機関の悲惨な財務実態が晒されるのは何としても避けたいのが本音で、「政策投資銀行の経営に直結するJAL問題をソフトランディングさせることが至上命題」(財務省関係者)になっているからだ。もちろん、国交省や経済産業省にとっても、ナショナルフラッグの挫折は自らの政策の失態につながる。
そこで俄に浮上しているのが公的資金注入のシナリオだ。JALはかつて米同時多発テロの影響で業績が悪化した際、国際協力銀行の緊急支援を仰いだ経緯があり、航空会社を政府保証などで公的に支援するスキームも存在する。
(後略)